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TVアニメ第3期『とある魔術の禁書目録III』が制作決定! 2018年『とある』プロジェクト始動、公式サイトもオープン - アニメイトタイムズ とある魔術の禁書目録とは とある魔術の禁書目録の38%は鍛錬で出来ています。とある魔術の禁書目録の21%は覚悟で出来ています。とある魔術の禁書目録の17%はマイナスイオンで出来ています。とある魔術の禁書目録の12%はかわいさで出来ています。とある魔術の禁書目録の3%はやらしさで出来ています。とある魔術の禁書目録の2%は理論で出来ています。とある魔術の禁書目録の2%はツンデレで出来ています。とある魔術の禁書目録の1%はビタミンで出来ています。とある魔術の禁書目録の1%は知恵で出来ています。とある魔術の禁書目録の1%は保存料で出来ています。とある魔術の禁書目録の1%は世の無常さで出来ています。とある魔術の禁書目録の1%は気合で出来ています。 とある魔術の禁書目録@ウィキペディア とある魔術の禁書目録 楽天売れ筋ランキング レディースファッション・靴 メンズファッション・靴 バッグ・小物・ブランド雑貨 インナー・下着・ナイトウエア ジュエリー・腕時計 食品 スイーツ 水・ソフトドリンク ビール・洋酒 日本酒・焼酎 パソコン・周辺機器 家電・AV・カメラ インテリア・寝具・収納 キッチン・日用品雑貨・文具 ダイエット・健康 医薬品・コンタクト・介護 美容・コスメ・香水 スポーツ・アウトドア 花・ガーデン・DIY おもちゃ・ホビー・ゲーム CD・DVD・楽器 車用品・バイク用品 ペット・ペットグッズ キッズ・ベビー・マタニティ 本・雑誌・コミック ゴルフ総合 掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る ページ先頭へ とある魔術の禁書目録 このページについて このページはとある魔術の禁書目録のインターネット上の情報を集めたリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新されるとある魔術の禁書目録に関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のういういdays ―――とある寮の一室 「ばか当麻!」 そろそろ日も落ちようとする、たそがれ時。 空気を裂くような叫び声と、バチンッという音がした直後、ある部屋のドアがズバァッと開き、少女が飛び出してきた。 今にも溢れんばかりの涙を目に浮かべた彼女―御坂美琴―は、風巻くほどの速さで走り去った。 パタンッという音と共に、開きっ放しだったドアが閉まる。 風が吹いたりして勝手に閉まったわけではない。 ドアノブを握り、外界から自分の部屋を遮断したのは、黒い髪がウニのようにトゲトゲした少年である。 幾度もの不幸に見舞われ、しかし最近は有り余るほどの幸運に包まれている少年。 その少年は現在、頬を赤く腫らしていた。 というのも、先ほどの空気を震わせたような音は、いつもの雷撃ではなく、彼の右手の効果領域の外の攻撃―――手っ取り早く言ってしまえば、美琴の怒り120%がこもった強烈な平手打ちによるものだったのだ。 「痛っつー…アイツ、電気使い以外の能力も持ってるんじゃねぇか?」 一人で呟いてみるが、そんなことをしたところで痛みは引かない。 「はぁ…あんなに怒った美琴は初めてだな…そりゃそうか…」 先ほどの状況を思い出し、頬と、それから胸の奥がずきん、と痛む。 「とあるカエルのマスコットがイギリスでまさかの大流行!」 いつものようにお昼ご飯を一緒に食べ、午後のゆったりとした時間を共有していたとき、点けっ放しにしていたテレビからそんな言葉が飛び出した。 常盤台のお嬢様はレベル5の誇る超スピードで、ぴくっと反応し、テレビの方へ顔を向けた。 アナウンサーの話によると、日本から帰国したとある少女がそのカエルマスコットを所持しており、そこから爆発的に広まり、ついには英国限定商品なんてご当地アイテム的な物まで売り出されるらしい。 「ほれみなさい!ゲコ太の愛らしさはもう世界基準なのよ!!」 ニュースに釘付けだった美琴は、上条の方へ顔を向け、勝ち誇ったような声をあげる。 そして、私たちもおそろいの…と言いながら上条の携帯に目を向け、その動きを止める。 ―――今までたった一つだけ付いていた緑色のストラップが無くなっている。 カエルを模したキャラクターのついたそれは、美琴にとって大切な想い出の一つでもあり、自分の携帯にも同じ物が下がっている。 「あれ…当麻?携帯どうしたの?」 「携帯?ん、あ、あぁ、ストラップですか…?」 「まさか…アンタ無くしたって言うんじゃないでしょうね!?」 曖昧な上条の返事に彼の不幸属性を足し合わせた結果、美琴は苛立ちを覚える解答を導き出す。 「いやいやいやいや!そんな恐ろしいこと!!」 「じゃあなんでストラップを外してるのよ!理由を聞かせなさい!」 美琴の周りでバチバチと空気が帯電する。 言葉を選んでいるような上条の様子に、その電圧はどんどん高まっていった。 「まさか…また私に隠し事でも―――」 「う…実は…、ちょっといま御坂妹に貸しててな…」 「え!?なんで!?」 予想外の返答に空気中の電気が霧散していく。 「べ、別に…やったわけじゃねぇよ。ちょっと貸してるだけで」 「そういうことじゃないの!」 歯切れの悪い答え方に、いらつく美琴。 目に涙が浮かぶのは、怒りのせいだけではない。 「だって…あれは大切な想い出で…二人の初めてのおそろいで…」 なんとか気持ちを鎮めようとするが、衝動的に湧き上がる様々な感情に言葉を繋ぐのが難しくなる。 「だから貸してるだけだって。ちゃんとすぐ返してもらうから」 「そんな言葉聞きたくないわよ!!私の気持ちなんて一瞬も考えなかったんでしょ!!」 それで件のばか発言である。 怒りから能力の制御を諦めた美琴は、その右手を渾身の力で振り抜き、そのまま上条の顔を見ることなく部屋から走り去っていった。 それから3日間、二人は会話どころか、会うことも連絡をとることもしなかった。 こんなことは恋人となって以来、初めてのことである。 美琴をこよなく愛するパートナーである(上条の恋のライバルとも言う)黒子ですら、上条っ気のない美琴に違和感を抱き、不安を覚えるほどだ。 「お姉様、あの殿方と何かありまして?」 黒子はベッドに俯せにになる美琴へ声をかけた。 ここのところ毎日、美琴はずっとベッドに倒れ込んでいる。 今日は休日ということもあり、もうお昼を過ぎているにも関わらず、美琴は朝からベッドを離れていない。 理由は明らかだと思う。 思うのだが、今までその理由を問うことが出来ずにいた。 「別に…」 やっとの決心で投げ掛けた問いに対して、返ってくる言葉はあまりに素っ気無いものであった。 いや、この美琴の様子を見れば、返事があっただけでも僥倖なのだろうか。 「この数日、ずっとお一人でいらっしゃる様子ですし、黒子は心配ですの」 「別に大丈夫よ。たまに会わない日が続くのだって、おかしくないでしょ」 「それはそうですが…」 ならば、どうしてそんな顔をするのか、と黒子は思う。 いつもの活発ではつらつとした表情は、どこにも見ることができない。 いつまでもこんなお姉様は見ていたくない。 黒子は苦しい面持ちを隠し、わざと明るい声を上げることにした。 「それでは、今日は黒子と女同士水入らずで愛を育みましょう、お・ね・え・さ・ま♪」 テレポートで颯爽と美琴の隣りに現れた黒子は、愛するお姉様の細い体に抱き付き、柔らかな肌へと手指を這わせた。 いつもの怒鳴り声&ビリビリ攻撃が来るのは覚悟の上だが、それで日常を少しでも取り戻せるのであれば安いものだ。 「黒子…?………そうね、たまにはアンタと過ごすのもいいかもね……」 予想外の返答に、黒子の動きが止まる。 あまりに乾いた言葉。 求めていた答えは、それではない。 「………嫌ですの」 「何よ、自分で誘ってきたんでしょ。いつもだったら喜んで飛び付くとこじゃない」 「………お姉様、何がありましたの?」 「何もないって言ってるでしょ!アイツのことだって、黒子には関係ないじゃない!」 黒子の肩がビクッと震えた。 それも望んでいた答えではない。 美琴の放つ一字一句が心の奥に突き刺さり、胸を抉るような痛みを感じる。 しかし、黒子はそこに美琴の中にある不安の一端を垣間見た気がした。 そこで黒子は一切の感情を抑え、極めて優しい声で美琴に語りかける。 「お姉様、元よりわたくしには茨の道しか残されておりませんの」 パートナーの言葉の内に何かを感じ取ったのか、美琴がぴたりと動きを止める。 「一緒に過ごすお二人の笑顔を陰より見守るのか、ふさぎ込み傷付いたお姉様のお隣りで、一人偽りの笑顔を浮かべて過ごすのか」 「黒子…」 「ならば一人でも笑顔の多い世界を望んで何が悪いのでしょうか」 「黒子……」 「大切なお姉様。傷つけると知って、あえて申上げます」 一呼吸おく黒子。 真剣な表情に、美琴は目をそらすことができない。 「お姉様は、上条様を信じることができませんの?」 今度は、美琴が肩を震わせた。 実は自分でも分かっていたのだ。 上条は自分に対して『何か』をしたわけではない。 ただ、彼の行為が許せなくて、その真意が掴めなくて、衝動的に感情をぶつけてしまったのだ。 「何があったのか、わたくしには分かりませんし、そのことで何かを申し上げる資格がないのも自覚しておりますの」 一言ずつ絞り出すような黒子の口調に、美琴は自分がどれだけ後輩の心に傷を負わせたのかを理解した。 その事実を受け止め、美琴は黒子の目を真正面から見つめ、次の言葉を待つ。 「あの類人猿は心底頭にくる存在ですが、お姉様の全てを受け止められる方はあの方しかいらっしゃらないのでしょう?」 もちろん超能力という意味だけではなく、と言葉を続ける。 痛いほど突き刺さったその言葉は、しかし暖かみに満ち溢れていて、そして―――今の美琴には、非常に心強かった。 「ごめんね…黒子…」 「まったくお姉様は常盤台のエースなのですから、こんなことで一々お気持ちを揺るがせてはなりませんの」 「…ありがとう、黒子」 頬に涙の筋を浮かべた美琴は、それでも僅かに笑顔を向ける。 いつものお姉様の笑顔に黒子はパッと顔を赤らめて目を逸らし、早口にブツブツと呟きを漏らした。 「お、お姉様がわたくしにありがとう…!黒子、人生最大の喜びを噛み締めておりますの!………それにしても、あの類人猿、お姉様をこれほどの失意の底へと追い込むなんて、今後どんな振る舞いをしたところで、ブ・チ・コ・ロ・シ・か・く・て・い・で・す・の…」 黒子が『真っ黒子』になっている中、突然ゲコゲコという電子音がした。 二人はバッとその発信源へと首を向け、次にお互いの顔を見合わせた。 無言でうなづく黒子。 美琴は軽く深呼吸をして、ゆっくりとゲコゲコ携帯を開く。 「会いたい」 たった4文字。 肯定も否定もない4文字。 その4文字に美琴は言葉にならぬ安心感を抱いていた。 瞳に力が宿る。 ―――きっと大丈夫。 「黒子、」 手早く靴を履き、行ってきますを告げるために振り向くと、自分の後輩が右手を伸ばすのが見えた。 「私の愛する常盤台のエースは、男一人をモノにするくらい、お手の物なんですのよ」 ヒュン、という音が鳴り、エースはその姿を消す。 部屋にはツインテールの少女が一人残された。 「行ってらっしゃいませ、お姉様」 少女は、ため息混じりに呟く。 先ほどは、あぁは言ったものの、やはり胸の奥にちくりと刺さるものがある。 こんな顔は見せたくはない。 それにしても――― 「たった4文字に負けるなんて、本当に憎たらしい男ですの」 ふっ…と、ほんのわずかに、雫がこぼれた。 ―――とある公園 「ったく…場所も知らせないで会いたいってどういうつもりよ!」 茶色い髪をした少女が目の前の少年へと声を掛ける。 その声には怒りも含まれていたが、同時に喜びや安心のような感情も混じっていることに美琴は気が付いた。 彼と同じ時間を共有すること、その大切さを改めて実感する。 「すまん…ちょっと緊張しててな…」 「う…まぁ…それは私にも原因があるというか…」 むしろ大半は自分のせいなのではないかと思うのだが、やっぱり自分だって傷ついたし悩んだしで、素直には言葉に出来ないものだ。 「あの…な…、美琴…」 「う、うん…、何、当麻?」 重い車輪がゆっくりと回り出すように、二人は言葉を交える。 「ストラップのことだけど、俺、お前の気持ちをちっとも考えてなかった…」 「ううん…、私だって、何も聞かずにぶっちゃって…ごめんね、痛かった…?」 「まぁな…ビリビリ以外に能力でも持ってるんじゃないかと思ったぜ…」 上条は、痛みを思い出すように頬をなでる。 「ご、ごめんね!そんなに力を入れるつもりは無かったんだけど…」 「いや、あれは俺が悪かったんだし、美琴は気にしないで良いんだ。あのストラップが大切な物だってことは、ちゃんと分かってたのにな」 「当麻…」 上条に優しく撫でられ、うっとりとした目をする美琴を見て、腫れが引いて本当に良かった、と思う。 実は、次の日に真っ赤に腫れ上がり、誰かに会うたびに、いい気味だ、とか、ざまあみやがれ、とか、ついに上条神話の崩壊か!?なんて言われたのは絶対に秘密だ。 「さてさて美琴さん、今日お呼びしたのは、他でもなくストラップを外した理由をお伝えしたかったからなのですよ」 「う、うん…!」 上条の軽い調子に、美琴は逆に緊張の様子を浮かべる。 あれから何度もその理由を考えたのだが、決定的な解答を導き出すことは出来なかった。 無くしたわけではないとすると、なぜ上条は大切なストラップを外してしまったのだろうか。 そんな疑問を抱く美琴に、上条はポケットからリボンのついた小さな袋を取り出す。 「これ…お前にプレゼントしたかったんだ」 「え…?」 予想外の言葉に困惑しつつも、その贈り物を手にする。 「あ、ありがとう…。開けていい?」 「あぁ、そのために渡したんだからな」 細い指でリボンを丁寧にほどき、袋を開く。 「これ―――!」 中から美琴が取り出したのは、小さなティーカップを手に、不敵な表情を浮かべるカエルの人形である。 ご当地限定ですよ!と言わんばかりに、そのカップにはイギリスの国旗がデザインされている。 「英国限定発売のゲコ太じゃない!!どうしたの!?」 「いや、この間インデックスさんから電話がかかってきましてね」 約一週間前、真夜中に上条家の電話が鳴り響いた。 こんな時間に何ですかこのやろー間違い電話だったらただじゃおかねーぞこの酔っ払いめ、なんて不平たらたらで受話器をとると、元居候さんからであった。 インデックスの話によると、イギリスでは今、ゲコ太がかなりの大流行であり、それを持ち込んだ彼女も一部のファンから伝道師扱いされているらしい。 はっきり言って、大食い少女が信者様方からたらふくお菓子や食料を頂戴したとかいう話は心の底からどうでも良い話だったのだが、その大流行グッズのイギリス限定版が出るという話には上条の耳もぴくりと食い付きを見せた。 …結論から言えば、インデックスが役立ったのは情報提供までであった。 伝道師と持ち上げられていても、彼女自身はゲコ太に対してなんの執心もない。 ただでさえ品薄な商品を手に入れるために努力をするなんて、一日の大半を食に追われているシスターには考えの遠く及ばぬ領域の話なのだ。 しかし、そこに救いの女神が降臨する。 それが御坂妹だった。 浮かない顔で街を歩いていた上条に、相変わらずの薄い表情と妙な口調で、どうしたのですかと呼び掛けてきたのだ。 上条は別に頼るつもりもなく、自分の目下の悩みを話した。 すると、イギリスにいる別個体に調達を依頼すれば良い、と一瞬で問題を解決してくれた。 その後、上条は彼女にジャンボなフルーツのパフェをご馳走することになったのだが、それでも上条には御坂妹が天の御使いに見えた。 「それで、探すための手掛かりとしてストラップを渡してたってわけなのですよ」 「えっ…?」 長き説明を終え、さぁこれですっかり仲直りですよ、と考えていた上条は、美琴の上げた驚きの声に怪訝な顔をする。 「どうした、美琴?これでみんな解決万々歳だと上条さんは思ったりしているのですが…?」 「あのさ…あの子たちなら、誰か一人に一度でも見せればみんなに伝わるんじゃないの?」 「………あれ?」 時が止まる。 あれあれ、今回の大ゲンカって実は不要でした?例のあれってやつ?いつものパターンですか?なんて考えがよぎった瞬間――― 「………ア…ン…タ…ってヤツはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 会えなかった数日の間に溜め込んだストレスを全て吐き出すかのような雷撃に本気で死期を悟った上条は、生物としての反射でその目を閉じながら、これまでの経験から来る反射で右手を突き出した。 …が、いつもの僅かばかりの手応えすらやって来ないことを不思議に思い、両目を開いた。 すると、 「御坂妹…?」 自分の恋人とそっくりな顔立ちをした少女が、自分を庇うように立っていた。 「なんでこ…」 「ばか!!!!!アンタ何やってんの!?」 なんでここに、と問う前に、美琴の怒号がそれを遮った。 「私が瞬間的に逸らさなかったら、アンタは死んでたかもしれないのよ!?」 「すみません、とミサカは自分の衝動的な行為に対して謝罪の意を表明します」 まだ怒りの表情を浮かべる美琴に対して、感情の起伏が少ない妹。 それを見ていた上条は、冷静さを取り戻し、先ほどの疑問を御坂妹にぶつける。 「そうだ、お前どうしてこんなとこにいるんだ?」 「お姉様、ゲコ太探しのために、このストラップを貸すように言ったのは私です、とミサカは自分の嘘を告白します」 上条の質問を思いっ切りスルーした御坂妹は、スカートのポケットから例のストラップを取り出し、美琴にそれを見せる。 「アンタが?なんでそんなこと…。自分でネットワークの使い方は分かってるんでしょ!?」 「…その質問に返答する前に、あなたは先に自分の家へ帰ってくれませんか、とミサカは自分の願いを直球で伝えます」 今度は美琴の言葉に答えず、上条の方へ顔を向け、『お願い』をした。 人のこと思いっ切りスルーしておいて二言目にはそれですか…、と上条は面食らったが、御坂妹の薄い表情の奥に、何か真剣なものを感じ、分かった、と一言告げると寮の方へ歩みを向けた。 「ちょ、ちょっと当麻!」 「よく分からねぇけど、多分妹は大切な話があるんだと思う。ウチの鍵は開けておくから、いつでも来いよ」 じゃあな、と告げると、上条は本当に去って行った。 その背中が見えなくなるまで、同じ顔をした二人の少女は黙っていたが、やがて美琴が口を開いた。 「それで…、アンタはどういうつもりなの?」 「嘘をついたことは謝ります、とミサカは素直に自分の非を認めます」 「それよ。アンタがこのゲコ太を手に入れるのに力を貸してくれたのは嬉しいんだけど、なんで当麻のストラップを取るようなことをしたの?」 それさえ無ければ、今回の件は全てハッピーエンドである。 上条と妹達からのサプライズプレゼント、それだけではなぜいけなかったのか。 「…寂しかったのです、とミサカは自分の感情を吐露します」 「えっ…?」 今日何度目だか分からない驚きの声を上げる。 「あの人と一緒に過ごすようになってから、お姉様が病院に来て下さることが、ほとんど無くなってしまいました、とミサカは甘えたい盛りの少女であることをアピールします」 「あ…」 そういえば、と思い返す。 上条と恋人同士になる前は、週に1、2回は妹達のいる病院に顔を見せていた。 そしてその回数は今、確実に減っている。 「ごめん…」 今日は謝ってばかりだな、と思いながら、頭を巡らせる。 妹達は見た目こそ自分と同い年だが、その内側にあるものは違う。 まだ幼い心は、きっと家族とも言える自分との繋がりを強く求めている。 そんな中で、突然姿を見せることがなくなれば、不安に襲われるのも当然であろう。 「アンタは…私に自分のことを見て欲しかったの…?」 「それも、あります。とミサカは自分の正直な想いを言葉にする決心をします」 「それ『も』…?」 含みのある言い方に眉をひそめる。 妹達がこのような言い回しをするのはとても珍しいことのように感じる。 「ミサカは意地悪をしてしまいました、とミサカは自己嫌悪に陥りながらも自分の罪を認めます」 「意地悪?」 「お姉様。お姉様が、あの人と一緒に過ごしてる姿を見ていると、ここが痛むのです、とミサカは不可思議な現象に困惑します」 御坂妹は、痛みに耐えるように目を閉じながら、その手を胸に当てた。 「アンタ、それって…」 それは恋――― しかし、美琴はそうとは告げられなかった。 妹のもつあやふやな感情に名前をつけてしまったら、妹がその気持ちの存在に気付いてしまったら…たった7人しかいないレベル5、学園都市第3位の美琴にも怖いものがあった。 「―――ごめん…ごめんね…」 だから、ただ謝るしかなかった。 「なぜお姉様が謝るのですか、お姉様を傷つけたのはミサカが原因ではないのですか、とミサカは理解を超えた状況に疑問を浮かべます」 「そうかもしれない、けど」 辛い表情を浮かべる美琴に、妹は淡々とした口調で言葉を繋げる。 「あのストラップは、ほんのちょっとの間、その日のうちに返そうと思っていました」 「しかし、手にした途端、ミサカの中に嫌な気持ちが広がったのです」 再び御坂妹の表情が曇りを見せる。 言葉を発する毎に間を空けるのは、自分の心中を言葉にし尽くすことが出来ないからだろうか。 「あの人の付けていた物。それがミサカの手元にあるということに夢中になってしまいました。でも…」 陰が、さらに広がる。 「すぐに見ていても空しいだけになりました。見る度に辛い気持ちになりました…」 一度、言葉を区切る。 ここまで自身の想いを言葉にするのは初めてのことではないだろうか。 慣れないことをしているからか、次の言葉を紡ぐ前に御坂妹は軽い深呼吸を挟んだ。 「やっぱり…このストラップはあの人とお姉様の物なのです、とミサカは長い独白をここに閉じます」 「アンタは………。…ごめん、頭ん中ぐちゃぐちゃすぎて、何て言っていいか分かんない…」 顔を右手で覆い、頭を抱える美琴の様子を見ながらも、妹は言葉を続ける。 それは、自分が冷静に想いを言葉に出来るうちに、なんとか美琴に伝えようとしているように見える。 「お姉様、ご存じですか。あの人は嘘が苦手なのです」 「この数日、お姉様とあの人が一緒にいる姿を、どのミサカも見ませんでした」 「一度、どうしたのかと聞いたのですが、大丈夫だとしか言いませんでした。が、その顔は苦しそうでした」 先ほどと同様に、頭の中の想いを言葉にし尽くせないようで、一言ずつに間を設ける。 「お姉様でないとダメなのです、あの人は、とミサカはお姉様に絶対的な真実を突き付けます」 「もういい…!それ以上続けちゃ駄目!アンタが苦しいだけじゃない!」 妹の肩に手をおき、その言葉を止めようとする。 「大丈夫ですよ。お姉様とあの人が幸せそうにしてることがミサカの喜びなのです、とミサカは笑顔で二人を祝福します」 その笑顔は、こぼれた涙の線でいっぱいだった。 まるで自分の涙に気が付かないように、御坂妹はその歪んだ笑顔を向け続ける。 「もうやめなさいよ…。…嘘が下手なのは、アンタもじゃない…」 自分の想い人が恋人へ贈るプレゼントの相談を受け、さらにはその用意までする。 その心の痛みとは、どれほどのものだろうか。 「ごめんね、私だけが良い気でいて…ごめんね、気付けなくて…ごめんね、臆病で…」「お姉様、この痛みは何ですか…、この涙は何ですか…、とミサカは制御の効かない感情に恐れを抱きます」 「それはね…、それがね…」 先ほどは言えなかった言葉。 しかし、苦しいほどに共感できる胸の痛みを知って尚、それを隠し続けることは出来なかった。 「それが…、恋、よ」 一言ずつ押し出すように呟く。 声と共に溢れた涙が美琴の頬をつたう。 「そうですか、これが、恋。では…ミサカのこれは、失恋、なのですか、とミサカは…胸に…穴が空いたような痛みを…」 御坂妹は、ほとんど言葉にならない声をかすれさせ、美琴へと倒れこんだ。 久し振りの繋がりを求めるように、美琴を細い腕で抱き締める。 美琴も、同じように手を回し、さらに雫をこぼした。 最後の問いには答えられなかった。 しかし、今自分は目の前の妹を支えてやらなければならない。 同じ顔をした二人は、その体を寄せ合い、お互いを暖め合うようにして何十分も涙を流し続けた。 ―――とある寮の一室 公園で妹と別れると、美琴はその足で上条の家へと向かった。 着いてすぐ、美琴は再び泣いた。上条の胸に抱かれ、ただただ涙を流し続けた。 その痛みを上条はほとんど知ることは出来ない。 何があったのかも分からない。 しかし、何も言わず、上条はただただ抱き寄せ、頭をなでてやった。 「ごめんね、いっぱい泣いちゃって」 やっと落ち着いたのか、美琴が顔を上げた。 「すっきりしたか?」 「ちょっとはね…ありがと。…ねぇ、当麻?」 「ん、なんだ?」 「私…当麻にばっかり夢中で、大切な後輩や妹達も放っておいて、ダメな女だね…」 自傷的な言い草だが、上条はそこに贖罪を求めるような表情を感じた。 「お前はレベル5とか言われてるけど、全然完璧じゃないよな」 「うぅ…」 茶化すような上条の口調に安心感を抱きつつ、うなだれる美琴。 自分で分かっていても、人から言われると、ちょっぴり重い。 「でもさ、誰も彼もを大切にする、そんな器用なこと出来るヤツなら、そんなに心の深くから繋がり合えないんじゃないか」 「…どういうこと…?」 まだ頭がスッキリしきっていない美琴は、上条に説明を求める。 俺は何があったのかよく分からないんだけどな、と前置きをして上条は再び口を開いた。 「全ての人を大切にするとか、全ての人を選ぶとかって、結局誰も選んでないってことだろ。それって、大切な人がいないのと同じだと思うんだ」 「…うん」 「お前はさ、今まで大切なことを選び続けたし、そうやって努力を重ねてきたんだと思う」 遊びより勉強!とかな、と上条は付け足す。 その言葉に、美琴はなるほどと思い、自分のことを分かってくれる上条に何だか嬉しいやら照れくさいやらで、くすぐったい感覚を得ていた。 「でもさ、今はきっとその大切なことがたくさんあるんだよな。あっちもこっちも大事にしなきゃ、でも体も心も一つしかない」 「…うん…。なんだか…当麻が頭良く見える…」 「うるせぇな、俺だってたまにはやれば出来る男なんですよ。人生の先輩ナメんな」 人生の経験値(記憶的な意味で)では、実は上条の方が年下だったりするのだが、ここではあえてスルー。 「それで、俺が言いたいのは、大切にしなきゃ、なんて思わなくていいんじゃないか、ってことだ」 「えっ…でも…」 自分を慕う後輩も、妹も、二人とも傷つけた。 それでいて自分だけのうのうと笑っていられない。 「別に大切にしなくて良い、ってわけじゃないぜ。大切だと思ってれば、それだけで良い、って意味だ。お前だって、他の誰かに大切にしなきゃ、とは思われたくないだろ」 「そうだけど…」 上条の言うことは納得できる。 出来るのだが、自分ばっかりそんなに救われていいのだろうか…。 「いいんだよ」 「―――!!」 まるで心を読まれたような発言に言葉を失う。 「お前が大切に思える人ってことは、お前が心から笑っていれば、一緒に幸せになってくれる人なんだろ。だから、そんなに自分を追い詰めなくていいんだよ」 「…私…笑えるかな…?」 「ったく、何言ってんだ」 心底呆れたという顔で、上条は美琴の髪をくしゃくしゃとなでつける。 瞬間、美琴はすぅっと心に日の光が差したように暖かみを感じる。 「俺がずっと側にいてやるんだぜ。お前を不幸になんてさせないよ」 「…ぷっ、何よそれ、自分の不幸自慢?」 上気する頬を隠すように、上条の鼻をつつく。 してやられた。 もう自分は笑顔を取り戻しているじゃないか。 「ほら、笑った」 やっぱり見透かされていた。 こんなときばっかり勘が良いんだから、と美琴は口許を緩める。 「常磐台のエースであるお前も、二人きりのときに甘えるお前も、たくさんのものを大切にしたいお前も、みんな合わせて御坂美琴だろ」 上条の言葉は、一つ一つが胸にじんわりと染み込んでいく。 この安心感に、何度も救われているのだ。 「でも、どんなお前も、笑顔でいる時が一番、魅力的だよ」 …ぎゅ。 自分より少しだけ高いところから抱き締められる。 この感触は久し振りだ。 とくん、と胸が高まる。 やっぱり自分ばかりが良い思いをしている気がして少し気が引ける。 しかし、都合の良い話だと思うのだが、上条の言葉は何の疑いもなく信じることが出来た。 まずは、自分の笑顔から。 「当麻、私、幸せよ」 だから、その喜びを認めることが出来た。 「そうだな。お前は幸せ者だよ。大切だと思える人がいるってことは、幸せなことだ」 「何一人で悟ってるのよ。でも、本当にそうだと思う」 「だろ?だから俺も、すぐ隣にお前がいてくれて幸せなんだよ」 唇が触れ合う。 数日ぶりのくちづけは、ちょっぴり恥ずかしくて、とっても嬉しくて、それから、涙の味がした。 「もう…」 これからも同じ悩みや違う悩みに襲われることがあるだろう。 でも、彼の言葉は自分の悩みなんて、すぐ誤魔化してしまうのだろう。 でも、今はそれをただ認めるのはまだ少し悔しかった。 だから、色んな想いを込めて言葉を贈る。 親愛なる恋人へ。 「…ばか当麻」 とある少女のういういdays5―つづく― 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある少女のういういdays
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【登録タグ T rlboro 初音ミク 曲】 作詞:rlboro 作曲:rlboro 編曲:rlboro・まーる 唄:初音ミク 曲紹介 「君がそばにいるだけで僕は幸せでした。」 *幸せって言う楽の形* イラストは はねぽち氏 と tikuwadx氏 が手掛ける。 再マスタリングしたものが、コンピCD『Innovator-gaku』に収録されている。 歌詞 ありがとうって 言葉だけの 形のない表の顔 行動にも出せないくらい 天の邪鬼で少し辛い 哀しい事苦しい事 少しあれば人にたよる 喜怒哀楽の激しさは 他の誰にも負けないの それじゃ駄目だなんて 自分じゃわかってはいるけど ahh ahh せめて夢の中だけでいい? 嫌いなモノ全部まとめて捨てよ そしたら君がほら近くなる 嫌いなモノ全部まとめて捨てたら そしたら僕もほら近くなる そしてまた一緒に手と手を繋いで そしたら君もほら近くなる だからまた一緒に約束してね その時までずっと変わらずに 君はどうしたい ぼくは傍にいる 君が傍にいたらそれで 僕は しあわせだ TARARURA* 嫌いなモノ全部まとめて捨てよ そしたら君がほら近くなる 嫌いなモノ全部まとめて捨てたら そしたら僕もほら近くなる RARARURA* だからまた聞いて この想いの詩は いつもいつまででも かわらずに コメント 仕事速くて -- 名無しさん (2010-10-25 19 08 34) ↑すみません、打ちミスです(;ω;) -- 名無しさん (2010-10-25 19 09 52) これすきだ -- 名無しさん (2010-11-04 19 56 19) もっと伸びるべき!めちゃめちゃ好き*^ー^* -- 維月 (2010-11-12 00 49 13) まぢ泣き入る -- ふいいいいいい (2010-11-25 17 42 26) いい曲だ~!! -- 名無しさん (2010-11-29 23 11 54) いい曲♪♪ -- 名無しさん (2010-12-01 00 57 14) 可愛らしくてステキだわ -- 名無しさん (2010-12-30 01 34 20) 初音の声がすごい可愛い。 -- mizuki (2011-01-25 01 46 45) 何で伸びないのか不思議な曲。知らないと損だと思う曲 -- ちょき (2011-11-21 07 47 14) こういう曲好き -- 2000 (2012-01-25 23 16 25) ミクさんの声が可愛い。もちろん曲自体も大好きです。 -- mizuki (2012-02-23 00 55 10) オルゴールから始まるとこが好きです*** すごく可愛らしいですねっ^^ -- 音願 (2012-06-04 22 11 57) もっと有名になれ -- やま (2012-08-30 22 28 03) この歌すごく好きなんだけどTARARURAってどういう意味? -- 名無しさん (2012-09-23 23 49 51) 名前 コメント
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とある美琴の他寮生活<アウトドア>最終章 その日、上条当麻と御坂美琴は死んだ。 これまた仲良く手をつないで帰っているときに。 上条勢力をつぶすために出てきた猟犬部隊(ハウンドドッグ)により、暗殺された。 天草式、旧アニューゼ部隊、必要悪の教会(ネセサリウス)、神の右席などと猟犬部隊が戦争を起こした。 まさに、科学と魔術が引き起こす第3次世界大戦。 これにより、ヴェネツィアなどの主要都市が破壊され、 学園都市第1学区が丸々消滅した。 結果、上条勢力の中心人物、上条当麻と御坂美琴がアレイスター=クロウリーの手で暗殺された。 そして、 妹達(シスターズ)全体の処分、および学園都市をイギリス清教必要悪の教会(ネセサリウス)の支配下に置くことで和解、終焉を迎えた。
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その直後、界刺の携帯が鳴り響く。 界刺は、携帯の画面に表示されている電話主を確認し、一息を吐いた後に電話に出る。 「もしもし」 「界刺さん!!今何処にいるんですか!!」 電話主は一厘であった。彼女は大声で界刺に問い掛ける。その声には焦りの色が十二分に含まれていた。 「何処って、公園だよ。この前、君とWデートした時のさ」 「な、何でそんな所に・・・」 「いやね、あのお嬢さんと待ち合わせしていたんだよ。この前貸した俺の服を返してもらうために」 「は、春咲先輩はそこにいるんですか!?」 一厘は一縷の希望を持って界刺に春咲が傍にいるか確認する。だが、 「いんや、いない。どうやら、風紀委員だったことが過激派の救済委員達にバレて、しかもとっ捕まったようだ。さっきメールで連絡が来たよ」 「えっ・・・?」 界刺のあっけらかんとした発言に言葉を失う一厘。 「え~と、なになに。『今から裏切り者の安田改め春咲桜を“制裁”しま~す!何と、彼女は風紀委員だったのです! この裏切りも同然な彼女に私達過激派は断固たる“制裁”を加えようと思います。もし、参加したければ、第6学区の○○まで。』って文面だな。 ご丁寧にとっ捕まったあのお嬢さんの写真付き。全く趣味が悪いねぇ」 「・・・・・・」 「あのお嬢さんが下手を打ったのか、過激派の連中が調べ上げたのか、どっちにしろバレるのが早-な。俺の予想より結構・・・」 「・・・してるんですか?」 「えっ?何?」 界刺の他人事のような口調に、何時の間にか声が低くなる一厘。その声色にははっきりとした憤怒の意思が込められていた。 「そこまでわかってて・・・あなたは一体何をしているんですか!!?何のためにあなたが『そこ』にいるんですか!!?」 「ちょっ!!大声で話すな!耳が遠くなるっつーの!」 「真面目に答えて下さい!!何故あなたは春咲先輩を助けに行かないんです!!? 今こうやって、あなたがボーっとしている間にも春咲先輩が危険な目に合ってるかもしれないんですよ!!?」 「・・・かもな」 「私なら、すぐに春咲先輩を助けに駆け付けます!!なのに、あなたは・・・!!『学園都市の人間を守りに行く』って言った言葉、あれは嘘だったんですか!!?」 一厘の頭の中は、今や界刺に対する憤怒や疑問しかなかった。電話の先にいる男が理解できない。何故平然としていられるのか。 確かに界刺得世という男は変わっていると常々考えていた。だが、ここまでの大馬鹿野郎だったとは、一厘は夢にも思わなかった。 人が危険な目に合っているのにも関わらず、助けようとしない薄情者。今の界刺に対する印象が、まさしくそうだった。 「嘘じゃないよ、リンリン」 なのに、電話の先にいる男の口調には一切の淀みが感じられなかった。まるで、一厘が激怒することを見越していたように。 「ただ、俺にとって学園都市の人間を守るってのは、『シンボル』が・・・正確には真刺の奴が唱えた信念に基づいているってだけの話なんだよ」 「『シンボル』の信念?」 「そう。『高位能力者が責任と自覚を持って学園都市内の人間を守る手本となる』という信念さ」 「だったら、尚更です!!何であなたはその信念に基づいて、春咲先輩を救おうとしないんですか!?」 一厘は、いよいよわけがわからなくなってくる。界刺は『シンボル』の信念に沿って学園都市の人間を守ると言っている。 ならば、何故春咲を救おうとしないのか?『高位能力者が責任と自覚を持って学園都市内の人間を守る手本となる』というのなら、尚更に。 「君は、あのお嬢さんを“今”助けることが正しいと思うのかい?」 だから、界刺の逆質問をすぐには理解できなかった。 「はっ?・・・た、正しいに決まっているじゃないですか!!春咲先輩が危ない目に合っているかもしれないのに、何故それがいけないんですか!?」 「それは風紀委員として?それとも一厘鈴音としてかい?」 「どっちもです!!私自身として!そして、風紀委員として!!『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』という私達風紀委員の信念に懸けて!!」 『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』。それは風紀委員の心得の1つであり、それ自体がスローガンとなっている在り方。 一厘はこの信念を背負うことに誇りを持っていた。それは、風紀委員一厘鈴音という少女の行動指針にもなっていた。 「『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』か・・・。いい言葉だね」 「いい加減はぐらかさないで下さい!!何故あなたは・・・」 「なら、ハッキリ言わせてもらうよ、リンちゃん。君があのお嬢さんを“今”助けに行くことは・・・『正しくない』!!」 「!!!」 界刺は断言する。一厘が一厘鈴音自身として、そして風紀委員として下した“春咲桜を今すぐ助けに行く”という判断が『間違っている』と。 「・・・ど、どういうこと・・・」 「さっきの質問への返答がまだだったね。え~と、『シンボル』の一員として何故助けないのか・・・だったかな。それなら、話は簡単だ。 “今”助けに行ったら、春咲桜という少女に責任と自覚を持たすことができないからだ」 「えっ・・・?」 「まぁ、これは俺の考えだから、君がどうしてもあのお嬢さんをすぐに助けに行くってんなら、俺にはそれを止める権利は無い。 場所は今さっき教えたよね。行きたければ行ってくるといい。行って、助けて・・・その結果として、君があのお嬢さんの『何を』守れるのか・・・楽しみにしているよ。それじゃ」 そうして、界刺は電話を切った。それで話は終わりとでも言わんばかりに。 一厘は、呆然としていた。もう通話が切れているのに携帯を耳元から離さない。 「(わ、私は『間違った』ことなんか言っていない!!『正しいこと』を言った筈!!春咲先輩が危険な目に合うのを黙って見過ごせるわけない!!風紀委員として!!私自身にとっても!!)」 人が危険な目に合っているのに助けないわけがない。そんな光景を見たなら、聞いたなら、知ったなら躊躇無く助ける。それが一厘鈴音という少女の『正しいこと』。 「(な、なのに!!なのに!!!何であの人はあんなことを言うの!?何で『正しくない』って言うの!?何で・・・どうして・・・)」 一厘の頭の中はぐっちゃぐちゃになっていた。そのために、自分がヨロヨロと歩いていたことにも気が付かない。 ズタッ!! ゴンッ!! 「キャッ!!痛~っ・・・」 どこかで躓いたのか転倒してしまい、机の角に頭をぶつけてしまう一厘。ぶつけた痛みが一厘を襲う。 数十秒後、一厘は立ち上がらないまま地べたに座り、背中をぶつけた机にもたれ掛けていた。 「(もう・・・何よ!!何なのよ!!ワケわかんない!!何で私がこんな思いをしないといけないの!?何で“私”をあんな男に否定されないといけないの!?)」 半ば自暴自棄になりかけている一厘。何が『正しく』て、何が『間違っている』のか、その判断が今の彼女にはできない。 「(私は『正しい』!!あの男の方が『間違っている』!!そうよ、今からすぐに春咲先輩を助けに行って・・・私が『正しい』ってことを証明してやる!!)」 一厘はよろめきながらも何とか立ち上がる。今この瞬間にも春咲がケガを負わされているかもしれない。そんな先輩の姿を絶対に見たくない。 一厘はすぐに支部の戸締りに掛かる。数分後、後は消灯し、戸締りをし、支部を出るだけとなった。 「(そうよ・・・そうよ!!あんな男を信じたのがそもそもの間違いだった!!私が最初から春咲先輩に付いていたら、こんなことにはなってなかった!! 見てなさい・・・バカ界刺!!あなたが『間違っている』ってことを・・・私が『正しい』ってことを証明してあげ・・・)」 『行って、助けて・・・その結果として、君があのお嬢さんの『何を』守れるのか・・・楽しみにしているよ』 「!!!」 だが、そんな彼女だからこそ、他人を人一倍気遣う心優しい彼女だからこそ、気が付いてしまった・・・それは矛盾。 『“今”助けに行ったら、春咲桜という少女に責任と自覚を持たすことができないからだ』 本来全く関係無い界刺得世が、自分の生活を削ってまで何のために、それこそ救済委員になってまで何故春咲桜の傍にいたのか。 『風紀委員の皆は・・・優しい。でも、誰1人だって私の本当の気持ちに気が付かない!!気が付いてくれない!! 「大丈夫だよ」って。「レベルなんて関係無い」ってそればかり。大丈夫なわけ無いでしょ!!関係無いわけないでしょ!!! そんな・・・こんな私に気を使ってくれる皆が・・・とてつもなく煩わしかった!!その気配りが・・・私だけが無力だと証明しているかのようで!!』 春咲桜が、何故救済委員になったのか。何故自分達風紀委員に悩みを打ち明けてくれなかったのか。 『(私は「正しい」!!あの男の方が「間違っている」!!そうよ、今からすぐに春咲先輩を助けに行って・・・私が「正しい」ってことを証明してやる!!)』 それなのに、一厘鈴音は自分の『正しさ』を証明するために春咲を助けに行くと心の中で決めた。決めてしまった。 それは、嘘偽りの無い一厘鈴音という少女の本音。春咲桜というレベルの低い少女―弱者―に対して、一厘鈴音というレベルの高い少女―強者―が抱いた・・・差別的な感情。 「ハハハ。・・・ハハハハハハハハハハハッッッッ!!!!!」 自分の心中に潜んでいたその感情を自覚した瞬間、その場に座り込んで高々に笑い声を挙げる一厘。その目には・・・涙が溢れていた。 「ハハハハハッッッ!!!何よ!何なのよ!!この気持ちは!!この感情は!!!」 大声で笑いながら、涙を流しながら、顔をくしゃくしゃにし、手で顔を覆う。 「馬鹿だ!!私は救いようが無い大馬鹿だ!!!何よ・・・春咲先輩のことを真剣に考えていなかったのは、私の方じゃない!!!」 泣き声が混じるその言葉は・・・春咲に対する懺悔か。 「私は自分の『正しさ』を証明するために先輩を助けにいこうとした!!何の言い訳もできない、それが私の本音だった!!! 何でよ・・・何でこんな感情が私の中にあるのよ!!!私は・・・ただ先輩のことが心配だっただけ・・・だけだった筈なのに!!!」 遂には顔を地面につき、うずくまってしまう。 「・・・あの人の言う通り、私が『間違っていた』!!私は『正しくなかった』!!!こんな、こんな私に春咲先輩を救う資格なんて無い!!!私は・・・私は風紀委員失格だ・・・!!!」 『己の信念に従い正しいと感じた行動をとるべし』。それが、一厘鈴音の支えだった。その支えが今、脆く崩れようとしていた。 「こんな、こんなものを!!風紀委員の腕章なんて!!私に付ける資格は無い!!!・・・・・・こ・・・こん・・・こんなもの!!!」 自分の腕に付けていた風紀委員の腕章を乱暴に掴み、それを引き千切ろうとする一厘。彼女はいよいよもって、引き返せない地点にまでその足を進めようとしていた。 ピロロロロロロロ~ その間際に鳴り響く一厘の携帯電話。その着信音に気付いた一厘は、今まさに引き千切ろうとしていた腕章から手を離し、震える手で電話主を確認する。 そして、携帯の画面に表示された名前に瞠目し・・・3度の息を吐いた後、ようやく電話に出る。 「・・・・・・もしもし」 「あ。リンリン?まだ支部に残ってる?」 飄々としたその声の主は―界刺。 「・・・・・・何よ」 「いやね。ちょっと調べモンをして欲しいっていうか、ある場所の地図をメールして欲しいと思って。 その感じだと、まだ支部を飛び出ていないようだね。よかった、よかった」 先程の剣呑とした応酬など忘れてしまっているのか、その口調は何時もの彼そのものであった。 そんな界刺に、一厘は涙声になりながらも言葉を告げる。 「・・・あのね」 「うん?」 「あなたの言う通り、私は『間違っていた』。私は・・・自分の『正しさ』を証明するために春咲先輩を助けようとしていた」 「・・・」 「全然春咲先輩のためじゃ無かった。私は心の何処かで思っていた。“弱い”春咲先輩を“強い”私が守ってあげないと。支えてあげないとって。 でも、違った。本当は・・・先輩を見下していたんだ。先輩のために気を使っていたんじゃない。自分のために先輩を気遣っていたんだ!!」 「・・・・」 「ホント、こんな私がよく先輩を助けようって言えたもんだよね。心の底では自分より弱い人って見下していたのにね!!ホント・・・・・・私って最低だ」 一厘の懺悔の言葉は止まらない。それだけ、己が自覚した感情が衝撃だったのか。 その瞳から流れ落ちる涙は、一向に止む気配は無い。 「だから・・・私は先輩の所に行けない。助けに行く資格なんて無い!風紀委員である資格なんて無い!!だって・・・私は、こんなにも醜い人間なんだもの・・・!!!」 慟哭。もう、そうとしか形容ができない程一厘は悲鳴を挙げていた。 完全なる自己否定。今までの自分を形作ってきたものの崩壊。 このままでは、彼女は・・・ 「へ~、色々思い詰めてたんだね~。んふっ。ところでさ、さっきの地図の件を早くお願いしたいんだけど」 「・・・・・・へっ?」 全く・・・鈍感と言うべきか、肝が据わっていると言うべきか、界刺は事ここに至っても平然と己の依頼を口にしていた。何時もの胡散臭い笑い声付きで。 「だ・か・ら、さっき調べて欲しいっつった地図のメールの件だよ!全くこれだからリンリンは・・・」 「・・・あっ。ちょ、ちょっと待って下さい。今パソコンを再起動しますから」 「再起動?ってことは、本当に飛び出る寸前だったのか。ヒュ~、危ねぇ」 涙で目を腫らしながらも、界刺の依頼のためにパソコンを再起動する一厘。彼の役に立つことが、せめてもの償い。そう考えているのかもしれない。 「あ、そうだ。パソコンが立ち上がる前まで、ちょっとお話しようか、リンちゃん」 「・・・話・・・ですか?」 「うん。まどろっこしいのは抜きでいくよ。君の懺悔なんか、俺にとってはどうでもいい」 「!!!」 界刺の口から零れたのは・・・懺悔の否定。 「そんなことは俺にじゃ無く、あのお嬢さんに言うべきだろ。俺は君の下僕でも何でも無いんだから。そこんトコ、履き違えないでくれる?」 「・・・ご、ごめんなさい」 一厘は先の醜態を謝罪する。自分でも抑えられなかったあの懺悔に、界刺を巻き込んでしまった。それは、一厘の心を重くする。 「わかってくれたんならいいよ。それと・・・これは確認事項なんだけど」 「・・・何ですか?」 まだ、パソコンの再起動までには至らない。それに多少イラつきながら一厘は界刺の言葉を待つ。 「君はさ、あのお嬢さんを助けたくないの?」 「!!!!」 その一言は・・・一厘の胸を真正面から貫いた。 「わ・・・私には、そんな資格なんてありません!!こんな私に・・・。それに、あなただって言ったじゃないですか。“今”は先輩を助けないって!!」 「うん、言った。但し“今”はね。その後は話が別だ」 界刺は一厘の心の奥底を抉り取る。 「今回お嬢さんの身に降り掛かった火の粉は・・・言ってしまえば自業自得だ。 風紀委員と救済委員の掛け持ちをするのなら、いずれこうなることは目に見えていた。あのお嬢さんは、そのツケを現在進行中で払っているだけの話さ」 「・・・」 「現在進行中、つまり“今”お嬢さんを助けに行ったら、今までの俺の努力が全て水の泡になる。 これは、彼女の問題だ。彼女自身で解決しなきゃならないことだ。たとえ、どんな結果になろうとも。 なのに、誰かが助けたら・・・それこそあのお嬢さんは今度こそ悟るだろう。『自分が無力』だってな。それじゃあ・・・話にならない。 春咲桜に必要なのは・・・“救いの手”なんかじゃ無い。“自分で立ち上がる足”だ!!」 「!!!・・・“自分で立ち上がる足”?」 一厘の心に界刺の言葉が広がっていく。それは容赦の無い・・・温かな『何か』。 「そう。それが自分の行動に責任と自覚を持つってことだ。俺は守られる側にもそれを求める。でないと、不公平だからね。 だから、俺達に精々できるのは彼女が自分の足で立てるように補助してやるくらいだ。 だから、俺は救済委員として、そして俺自身の意思であのお嬢さんを補助していたんだ」 「でも・・・私には・・・そんな資格が・・・」 「・・・ったくメンドくさい奴だなあ、君は。助ける資格?風紀委員失格?んなことはどうでもいいんだよ! 確かに君はあのお嬢さんを知らず知らずの内に差別していたのかもしれない。自分のために利用していたのかもしれない。 だが、それがどうしたってんだ!!あのお嬢さんを救う理由にそんな付属品が必要なのかよ! これが最後の質問だ。5秒以内に答えろ!・・・お前は、春咲桜を救いたくはねぇのか!?答えろ、一厘鈴音!!」 “これが最後”。そう断言した界刺の問いに、一厘鈴音は・・・ 「た・・・助けたい。助けたい!!先輩を、春咲先輩を救いたい!!!」 その瞳から再び涙が零れ落ちる。顔をくしゃくしゃにしながらも、涙声に喉を詰まらせながらも、一厘は答えを放つ。これもまた・・・嘘偽りの無い一厘鈴音という少女の本音。 「・・・わかった。なら、俺の依頼が終わった後に、俺が居る公園へ来い。場所は言わなくてもわかってんだろ」 「えっ?」 「今はその付属品・・・助ける資格とか、風紀委員失格とか、そいつ等の判断は保留にしときなよ。 その判断を下すのは・・・今回のことが全部終わってからでも遅くはない」 「・・・」 「そういえば全然気にしていなかったけど、他の風紀委員は支部にいないの?何かその様子だと、君1人みたいだね」 「・・・色々あって、今は私1人です。ただ・・・」 「ただ?」 「鉄枷が誰かからの電話を受けて・・・飛び出して行っちゃったんです。『春咲先輩が・・・』って言葉は聞きました。鉄枷の顔が瞬く間に青ざめていくのも」 「・・・成程。よりにもよってお嬢さんが所属する支部に連絡して、お嬢さんを完膚なきまでに叩き潰すつもりだな。下手したら、他の支部にも連絡が回ってるかも」 「そ、そんな!それじゃあ春咲先輩は・・・」 「今はそんな後処理についてどうこう言っても仕方無ぇよ。・・・なるようにしかならないと思うぜ」 そう言葉を交わしている中、ようやくパソコンが再起動した。それを確認した一厘は、界刺が求めた地図の情報を調べにパソコンに向かい合ったのである。 そして10分後、界刺の依頼通りに所定の地図をメールし終えた一厘は、今度こそ支部を後にするために、戸締りの準備に入る。 「そうやって、公園(そこ)に留まっているということは、何らかの作戦みたいなものがあるってことですよね」 「まぁね。こんな事態もおおよそ想定していたし。規模が予想以上にデカいのが不安要素だが。後はお嬢さん次第だな。もし、“リタイア”しちまったら・・・それもしゃーねーよ」 「っっ・・・!!」 「人はいつか死ぬもんさ。それが早いか遅いか、それだけの違いだ。まぁ、自分から死にに行く奴にはなりたくないけど。 リンリン・・・悪いが俺はこういう人間だ。今までも、これからも・・・な。あのお嬢さんが意地を見せるってんなら、力を貸してやる。こんな俺でも・・・君はいいのかい?」 「・・・今の私には、あなたが『正しい』のか『間違っている』のかの判断は下せません。だから・・・今はあなたと共に行きます。 もし、春咲先輩があなたの言う“リタイア”になったら・・・その時は私もその咎を負い・・・」 「それがいけないんだよ、リンちゃん。それはそれ。これはこれ。あのお嬢さんの問題と君の問題を混合するな。 そんなことに囚われてちゃあ、本当に大事な時に間違った一歩を選択しちまうぜ?囚われるな・・・見誤るな・・・見極めろ・・・掴み取れ・・・!!」 『界刺は・・・容赦しないよ』 「(本当にこの人は・・・)」 一厘は今更ながら形製が自分へ放った忠告の真意を理解する。全くもって界刺は容赦しない。平然と自分の心をかき乱す。抉り取る。蹂躙する。 だが、だからこそ一厘は己の醜さに気付けたのかもしれない。己の感情と向かい合うことができたのかもしれない。 だから、一厘鈴音は界刺得世と共に行くと決めた。その判断に―何が『正しい』のか、何が『間違っている』のかわからない一厘が下した―後悔は・・・無い。 「・・・よし。戸締り完了。これからすぐにそちらに向かいます!!」 「あいよ。・・・本当はこんなことになる前に何とかしたかったが、仕方無ぇ。改めて何とかするしかねぇか」 支部を出る一厘。その足は駆け足。その足で風輪学園の校門をもうすぐ越える。 「リンリン!!」 「はい!!」 そんな彼女に界刺が声を掛ける。それは、あの公園で既に言ったこと。 「君の力を借りなきゃいけなくなったけど・・・準備はいいかい?」 それは、界刺なりの気遣いの言葉。“一厘が春咲を救う作戦に参加してもいい”。界刺は一厘にそう言っているのだ。 「もちろん、私だけじゃ無いですよね!?」 一厘はその言葉に含まれる真意を汲み取り、その上で・・・もう一度だけ界刺に甘える。 「そりゃそうだ。俺やリンちゃんだけでできることなんてたかが知れている。 これもお嬢さん次第だけど・・・もちろん、他の奴等にも協力してもらうつもりだよ。俺やリンリンにはできないことを・・・ね」 それに応える界刺。一厘は思う。これが人を信じるということなのか・・・と。これが人を信頼するということなのか・・・と。 そして、きっと界刺は信じている。信頼している。春咲が意地を見せることを。でなければ、「協力」なんて言葉は・・・きっとあの人の口からは出て来ない。 それがわかったから・・・一厘は叫ぶ。それ―自分に欠けていたモノ―を教えてくれた界刺に、今できる精一杯の感謝を込めて叫ぶ。 「わかりました!!春咲先輩を救えるならこの一厘鈴音の命、あなたに預けますよ!!!」 continue!!
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある上琴の未来物語 重なる2人の思い 「なぁ、美琴。話さなきゃいけないことが2つある。」 唐突に話し出すウニ頭の高校生の名は上条当麻。 「なによ急に改まって。」 びっぐりした表情で返事をするの美少女の名は御坂美琴。 この2人は学校終わりに散歩をしていた。 「俺は美琴に隠していることがあるんだ。」 「え・・・。」 上条の意外な告白にびっくりしている御坂。 「まず1つ目。俺は実は記憶喪失だ。」 「2つ目。俺は今・・・、『インデックス』と一緒に暮らしてる。」 「・・・・・・」 御坂は下を向いてしまった。 (ええ、どういうことなの・・・。) 「とにかく色々理由があるんだ。信じてもらえないかも知れないけど聞いてくれ。」 「う、うん。」 ―そしてその女の子のことについて話す。 朝起きたらベランダに引っかかっていたこと。 完全記憶能力のせいで1年に1回記憶を消されていたこと。 完全記憶能力を利用されていたこと。 そしてその少女を救うために自分が記憶喪失になってしまったこと・・・。 話終わり御坂は重い口を開いた。 「なんで今まで言ってくれなかったの?・・・。」 「美琴には余計な心配してほしくなかったんだよ。 インデックスと一緒に住んでるなんて言ったら怒ると思ったし・・・」 「なにいってるの、なんも言わないほうが余計に心配よ。それに怒らないわよ。」 「とにかく今日はちゃんと話さないといけないなと思って美琴を呼んだんだ。」 「そうなの。そっか、初めてだもんな当麻の家。えへへ楽しみ。」 「そうですか。そう言ってもらえると上条さんはうれしいですよ。」 2人は手を繋ぎ上条家へと向かった。 2人は上条家の玄関前まで来ていた。 「ここが俺んちだ。」 「そうなの。」 「じゃあ入るか。」 上条は家を開錠して玄関を入る。 すると家の奥のほうで 「とうまとうま。どこに行ってたの。お腹すいたかも。」 と言う声が聞こえた。 「今から作るぞ、でもその前に話があるんだ。」 と上条は家に上がりながら御坂に向かい手招きする。 「どうした、いいから入れよ。」 「お、お邪魔しま~す。」 と上条の後について家へ入る。 そして進むとリビングがあった。 そこにはインデックスがいて御坂を見たとたんに目つきをかえた。 「短髪、何しに来たの?」 「な、何しにって・・・」 困っている御坂を見て上条が質問に答える。 「インデックス、俺、美琴と付き合ってる。」 上条がそう言ったとたんにインデックスの顔色が変わった。 「つ、付き合うってどういうことなの?説明して欲しいかも。」 「つまり俺の彼女だ。」 するとインデックスの目に涙が溢れだした。 「そ、そっか。とうとうこの日が来ちゃったんだね。・・・ねえ、とうま、とうまは私のことどう思ってる?」 「インデックスは・・・、家族みたいだな。」 「そっか。そうだよね。とうまはそんな風にしか思ってないよね。」 「・・・」 「私はね、ずっととうまのことが好きだったよ。もちろん、恋愛感情で。」 「インデックス・・・」 「でも、私は言えなかった。とうまとの関係が壊れちゃうんじゃないかと思って。」 (昔の私みたいだわ) 御坂は今までのやり取りを聞いて思った。 「なぁ、インデックス。」 「なあにとうま。」 「俺は、お前のことを赤の他人だと思ったことは今までに一度もない。そしてこれからもないぞ。」 「とうま・・・。実はそろそろイギリスに帰らないかって言われてるんだよ。」 「だれに言われたのか?」 「ステイルに言われたんだよ。」 「そうか。インデックスはどうしたいんだ?」 「私はイギリスに帰るんだよ。いつまでもとうまに迷惑は掛けられないかも。」 「わかった。それでいつ帰るんだ?」 「明日なんだよ。」 「「あした~!?」」 上条と御坂は声を上げて驚く。 「なぁ、インデックス。ここはお前の第2の実家みたいなもんだからいつでも帰ってきていんだぞ。」 「わかってる。いつでも戻ってくるんだよ。」 「ねぇあんた、本当にこれでいいの?」 「いいんだよ短髪。ただ・・・」 インデックスは少し間を置いて満面の笑みで 「絶対にとうまを幸せにしてね。」 「当たり前じゃない。これからもよろしく。私は御坂美琴って言う。日本に帰ってきたら私ともあってね。」 「うんわかった。私はインデックス・・・って知ってるか。」 と言い2人は約束の握手を交わした。 ――――――――――――――――――――――――――――― 次の日 2人はインデックスを見送る為に空港へ来ていた。 「本当に遠慮しないでいつでも帰ってきていいんだぞ。」 「うん。みこともこれからも仲良くしてね。」 「うん。当麻が好きどうし。」 「じゃあね。また会いにいくかも~。」 といって空港の保安検査場へ消えていった。 「まさかインデックスがあんなふうに俺のことを考えていたんなんてな。」 「私ちょっと妬いちゃったわよ。」 「ははは。確かにインデックスもすごい大切な存在だけど美琴も大切だぞ。 なんてったって俺の・・・その・・・彼女だからな。」 「・・・・・・」 「美琴?」 「ふ、ふにゃ~」 「ちょっ、空港で漏電はやばいだろう。」 インデックスは帰ってしまったがきっと上条の幸せの日々は続いていくだろう。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある上琴の未来物語
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「だから、聞こう。この中で、現在何らかの理由で体調を崩している者もしくはその傾向がある者はいないか!? 嘘を報告した所で無駄だ。何故なら・・・俺の『真意解釈』でお前達の心理状態は全て暴かれている!!」 会議室内が一気に静まり返る。『真意解釈』。椎倉が持つ精神感応系能力で、声や表情、視点、指紋等、極々微妙な変化を察知し、 その時相手が抱いていた感情、心理をほぼ正確に読み取れる能力。仲間である風紀委員には決して使わないと、椎倉自身が公言している能力。 その能力を、今風紀委員に対して使っていると椎倉は宣言したのだ。 「固地の疲労を見抜けなかったのは、風紀委員会を統括する役割を持つ俺の責任でもある。 自分の信念に拘る余り、仲間の状態を見抜けないようでは本末転倒だ!! だから、俺は決断した!!『真意解釈』の使用を!!だが、俺の口から言う前にお前達からの報告を受けたい。 固地のように、自身の体調の報告さえできないような仲間なら・・・俺は今後も『真意解釈』を使う!!どうだ!?」 椎倉の瞳には、断固とした決意の念が宿っていた。その気迫に、風紀委員達は呑まれる。だが、報告する者はすぐに現れない。 もし、体調が悪いと報告すれば固地のように風紀委員会から外される可能性があった。それは、休暇という名の戦力外通告。 仮に、休暇の後に戻って来たとしても周囲から心配されるのは目に見えている。そんな状態に、誰だって身を置きたく無い。 数十秒後、椎倉は溜息と共に言葉を吐く。 「そうか。ならば仕方が無い。俺の口から言う・・・」 「・・・はい」 「網枷・・・」 「双真・・・。やっぱり、あなた・・・」 手を挙げたのは、176支部の一員である網枷双真。 「す、すみません、リーダー。僕、ちょっと夏風邪を引いたかも・・・です」 「・・・も、もぅ!だったら、早く私に報告しなさいよ!!幾ら自分から発言しないからって、そういうのは駄目なんだからね!!」 「す、すみません・・・」 加賀美は思う。網枷が時折咳をしていたのは、やはり体調面が優れていなかったからだろう。 普段の仕事でも常に事務仕事にばかり就き、自分からは殆ど発言しない網枷の思考は、リーダーである加賀美でも読めなかった。 「・・・わ、私も、ちょっと喉が痛いです・・・」 「渚・・・。何で言わねぇんだよ!」 「・・・お、俺も一昨日の捜査中に脚を痛めちゃってます・・・」 「湖后腹・・・お前・・・」 「・・・目が痛いです。以前からずっと、債鬼の奴に事務仕事ばかり押し付けられていた疲れが・・・」 「・・・それは、致し方無いな。下克の奴も固地の無茶な要求が祟ってか、結構前から重度の肺炎を患っているからな。 俺も昨日と一昨日は調子を崩して休んでいたし・・・。最近は、特に暑いからな。予想以上に疲労も溜まっているのかもな」 「・・・椎倉先輩。押花の奴が傷心で・・・」 「・・・・・・ハァ」 「・・・そんでもって、176支部(ウチ)からは双真が・・・か。債鬼君が知ったら、『監督不行届だな』って怒られ・・・ないか。自分がそうなっちゃったし」 花盛支部からは渚が、159支部からは湖后腹が、178支部からは秋雪が、成瀬台支部からは押花(初瀬の申告)が、それぞれ体調の不良を訴えた。 (159支部の一厘も昨日の界刺との戦闘で体を痛めてはいたが、それは冒頭椎倉が説明した時に申告済みであった。愚痴とも言えるが) 閨秀、破輩、浮草、椎倉、加賀美が頭を抱える中、顧問である橙山が口を開く。 「まぁ、よかったっしょ。こういう場でも設けないと、皆言い難かっただろうし。これで、今後『真意解釈』は使用せずに済むっしょ?」 「・・・ですね。ちなみに、さっきは『真意解釈』は使っていなかったから、お前達の心理状態は知らないぞ?」 「えっ?ということは・・・」 「さっきのは嘘だ。『嘘も方便』というヤツだな、うん」 「えええええぇぇぇっっ!!?」 初瀬の声が会議室に響き渡る。つまり、椎倉はここに居る風紀委員の体調を見抜くために『真意解釈』を使ってはいなかったのだ。 「ど、どうしてそんな嘘を・・・?」 「葉原・・・。油断するなよ?これは、事と次第によっては『嘘から出た実』になる可能性だってあるんだぞ?」 葉原の疑問を待ってましたとばかりに、椎倉は淡々と説明を重ねて行く。 「確かに、先程の宣言にあった“今”の心理状態を見抜くために『真意解釈』を使ったというのは嘘だ。だが、今後はどうなるかはわからない。 大勢の命を預かる者として、自分の体調を偽るような仲間の存在を俺は許すつもりは無い。 もし、今後そういうケースを発見した場合は、その風紀委員はこの[対『ブラックウィザード』風紀委員会]から外すつもりだ。例外は無い。 例えば、また固地の奴がそういうことをすれば今度は休暇では無く除外だ。実力等関係無い。そんな人間は不必要だ」 「「「「「・・・!!!」」」」」 “風紀委員の『悪鬼』”と謳われる固地ですら、二度同じ真似をすれば切り捨てる。そう、椎倉は宣言しているのだ。 「だから、今後はそういう面においてはちゃんと報告してくれ。ローテーションの変更にも柔軟に対応する。 それは、何も俺にじゃ無くてもいい。各支部のリーダーに報告し、そのリーダーから俺に報告するという形でいい。 明後日からは・・・今まで178支部だけに認めていた支部単位の単独行動を解禁するからな。各リーダーの責任は、更に重くなるぞ?」 「椎倉先輩!?そ、それでいいんですか!?それを全支部に認めたら、本部で統制が取れなくなる恐れが・・・」 加賀美の質問にも、椎倉は動じない。そんなリスクは承知済みだ。覚悟の上だ。 「最低限の報告はして貰うさ。だが、今までは本部からの指示通りに全支部は動いていた。単独行動時の178支部以外はな。 捜査ルートの設定や変更等も、一々本部の許可が必要だった。だが、それでは即応性に欠ける。時間も掛かる。・・・そろそろ、現状の指針を変更する時ではあった。 現に、夏休みに入って俺達が掴んだ有力な手掛かりは、178支部を尾行していた『ブラックウィザード』の薬物中毒者2人だけだ。 だから、これからは各支部のリーダーの権限を増やすつもりだ。具体的には、現場に居るリーダーの判断を最大限に尊重する。 現場における作戦等も、リーダーが全て決めて構わない。一々本部の許可は取らなくていい。報告は後でして貰うがな。 もちろん、相談するのは構わない。リーダーの指示や要請に、即座に俺達本部に在住する者が応答する。 但し、本格的な単独行動をする支部は事前に俺か橙山先生へ連絡してくれ。これは、他の者への代行は認めない。必ず、該当するリーダーが俺か橙山先生に。いいな?」 「・・・了解しました」 「相変わらず決断する時は一気に来るな、撚鴃?」 「・・・わかった。何とか、固地が抜けた分を少しでも埋めてみるよ」 「風輪での騒動みたく、またやせ細らなければいいが・・・。あの時は酷かったモンな・・・私」 椎倉の決断に、各支部のリーダーである加賀美・冠・浮草・破輩は各々その重責を感じながら承諾する。 「さっき176支部の一部に認めた例の殺人鬼との応戦許可も、現場に居るであろう加賀美の判断に任せる。 神谷。一応戦闘自体は認めるが、それは加賀美が許可した場合だ。お前が言葉の抜け道を使うなら、俺も使わせて貰うぞ? 元々、お前達に認めたソレは単独行動を許可することを念頭に置いて判断したものだからな」 所謂、後出しジャンケンみたいなものである。先に認めておき、後で縛りを付ける。神谷としては自分から言い出したことなので、うまい反論が思い付かない。 「・・・チッ。・・・ようは、加賀美先輩の許可をブン取ればいいってことか・・・(チラッ)」 「ブルッ!?な、何恐い視線を送ってんのよ、稜!?」 「あぁ。加賀美先輩の震えている姿も、また愛おしい。ありがとうございます!!(グアッ)」 「そんな殺人鬼を、放って置く真似は許されない!!あの殿方のためにも、この私の手で終止符を打つ!!そうでしょ、リーダー!?(ガァッ)」 「私のようなエリートが、わざわざ叩き潰すと宣言したのです。まさか、加賀美先輩がそんな私の意気込みを無為にすることは・・・ないですよね・・・!?(グンッ)」 「・・・・・・倒す。・・・・・・倒す!・・・・・・倒す!!(ヌオッ)」 「く、来るな!!顔面ごと私に視線を送って来るな!!こ、恐いのよ、この問題児集団!!」 顔面ごと擦り寄ってくる176支部の問題児集団に、リーダーである加賀美は戦慄する。 「・・・あの纏まり具合を、普段から見せてくれたらいいのにねぇ」 「・・・だよな。あの人達って、個性豊か過ぎんだよなぁ・・・」 葉原と鳥羽という176支部メンバーにおける苦労人コンビが、自分達の仲間の行動に嘆息する。 「詳細については、この休みを利用して書類に纏めておく。休み明けに配るから、それに目を通してくれ。 それと・・・これは言っておこうか。お前達への発奮材料になるかもしれん」 「発奮材料?・・・何ですか?」 六花の声に、椎倉は最後の揺さ振りを掛ける。この場に居るかもしれない内通者へ向けて。“奴”が自分達を利用するなら、自分も“奴”を利用させて貰う。 神谷に指摘されずとも、自分とて“奴”の手でいいように転がされたことにはムカっ腹が立っていたのだから。 「もしこの場に居るのが俺では無く、界刺なら!この場に居る風紀委員の何人かが『シンボル』のメンバーなら!!この事件は、もうとっくに解決していただろう!!!」 「「「「「!!!」」」」」 表情から笑みが消える。コソコソ話も消える。雰囲気が・・・一変する。 「本当に惜しい。あの男がこの風紀委員会のメンバーなら、もっと効率的且つ迅速に事件を解決に導いていただろう。 あの男を含む『シンボル』のメンバーが全員風紀委員ならば、あの男達が俺達を引き連れて本気で動けば、『ブラックウィザード』を潰すことは造作も無いのだろう。 そもそも、『シンボル』の行動指針は俺達風紀委員と似通っている。そうだ、今からでもいいから奴等に協力を仰いでみるか?取引では無く懇願を。皆で頭を下げて。 あの男なら、それ相応の条件を付ければ動いてくれるかもしれない。どう思います、橙山先生?」 「な、何で私に話しを振るっしょ!?」 椎倉の急な振りに橙山が慌てる。そんな中、この場に居る風紀委員に胸に去来するのは・・・熱き思い。 それは、自分達が風紀委員であるという矜持から生まれた対抗心。『絶対に負けてたまるか!!』という思いが、自分の胸を熱く燃え滾らせる。 椎倉の言葉が本意で生まれたものでは無いのはわかっている。わかって尚、燃え滾る炎の拡大を抑えることができない。 「・・・そんなことをする必要はありません」 最初に呟いたのは・・・焔火。 「あの人に頭を下げる必要はありません!!これ以上私達の都合であの人に頼れば、私達が風紀委員である意味が無くなってしまいます!!」 「・・・俺も焔火と同じ意見だ」 次に言葉を発したのは・・・神谷。 「あんな“変人”のいいようにこき使われるのは勘弁だ。それに、俺達風紀委員があの男に劣る?そんなこと・・・絶対に認められるかよ・・・!!」 「あたしも、あの男に二度も頭を下げるのは嫌だぜ?あの“詐欺師”には借りがあるんだ。それを返さないまま屈してたまるかよ!!」 「その界刺という男・・・俺からしたら嫌いな部類に入る人間だな。固地1人でもキツイのに、そこにもう1人追加というのは勘弁してくれ」 「連中が困った時は手を貸すつもりではあるが・・・それ以外であの“変人”にドヤ顔されるのは私も気に入らないな。想像しただけで腹が立つ」 閨秀、浮草、破輩も続く。 「ぶっちゃけ、あの野郎は前から気に入らなかったんだ!!この際、あの男に俺達風紀委員の底力ってヤツを見せ付けてやろうぜ!!」 「相変わらず口うるさいですね、鉄枷は。でも・・・奇遇ですね。私もあなたと同じ気持ちですよ」 「言われてみれば、あの“詐欺師”って俺が嫌いなタイプだった・・・。すっかり、あの男に呑まれちゃってた・・・。これじゃあ、駄目だ!!気合を入れ直さないと!!」 「真面君・・・」 「・・・抵部さん。今度、その界刺さんって人に会わせて下さい」 「ど、どうしたの、かおりん?すっごくこわい顔しちゃって!?」 「(香織・・・。何か、嫌な予感がする。私も同行した方がいいかも)」 「鏡星先輩・・・」 「一色・・・。せーの」 「「“変人”死すべし!!!」」 「そうだ・・・。フフッ・・・。あ、あんな“変人”に負けっぱなしでいられるか・・・。絶対に目にものを見せてくれる・・・。ハハッ・・・」 「押花・・・。失恋ってのは、こうまで人を変えるのか?」 「(・・・色んな意味で効果テキメンだな。これで、休暇の中でも緊張の糸が途切れることは無いだろう。幾ら休暇と言っても、緊張まで完全に緩んで貰っては困るからな。 悪いな、界刺。こいつ等がお前にどんな迷惑を掛けようが、俺は知らないからな。神谷的解釈もアリだしよ。 その、なんだ・・・やっぱ、俺もお前にはムカついてるんだわ。後で骨くらいは拾ってやるから勘弁な)」 やはりと言うべきか、椎倉の発言を受けた各風紀委員の気勢は色んな意味でうなぎ登りだ。それだけ、あの男の存在が大きいと言うべきか。 「忠告しておくが、界刺に負けたくないからと言って無理した挙句に体調を崩した奴は即座に休ませるからな。いざという時は、『真意解釈』を用いて調べる。いいな? それと、さっき体調が崩れていると報告して貰った者は、すぐに病院へ行って来い。何なら、休暇の日数を延ばしてもいい。その場合は、できるだけ早くに申告してくれ! では、以上をもって緊急会議を閉会する。解散!!」 椎倉の終了宣言により、[対『ブラックウィザード』風紀委員会]に関わる緊急会議は幕を閉じた。 「幾凪。頼んでいたレポートはできたか?」 「はい!バッチリです!!」 「撚鴃も手段を選ばないな。まさか、あの緊急会議を開いた真意が『梳の嘘を見抜く能力を活かした嘘発見会議』だったとは、他の者には予測できないだろうな」 「そのために、わざわざ『真意解釈』を使った等と嘘を付いてまで皆の注目を俺に集めたんだ。固地の二の舞は何としてでも避けなければな」 ここは、成瀬台のある一室。そこに居るのは、椎倉・冠・幾凪の3名。ここで、椎倉は幾凪が作成したレポートに目を通していた。 「え~と・・・『鉄枷束縛 嘘は付いていないが、心情が表情に出過ぎ。ぶっちゃけてんのは、他人じゃ無くて自分(テメー)だろ。キャハッ!!』。 『加賀美雅 何か言いたげな表情を見せるが、結局は口に出せない。表情筋を見る限り苦労性が板に付いている。あんな立場になりたくない。ご愁傷様』。 『浮草宙雄 何かを隠しているような感じだが、それ程重要では無い模様。諦め癖が付いている感バリバリ!!隠していることもそれ関連かも!!お気の毒♪』。 『冠要 さすがは、私の冠先輩!!何時見ても美しいそのお顔。羨ましい限りです!!これで、風紀委員活動にもうちょっと真面目に取り組んでくれたらなぁ・・・』。 おい、幾凪。何だ、この恣意的解釈感溢れるレポートは?俺は嘘を付いていないかの確認と、お前から見た各人の印象をできるだけ客観的に書いてくれと言ったんだが?」 「えっ。何処かおかしかったですか?私自慢の状態発見レポート『表情透視 ライディテクター 』なんですけど? ハッ!もしかして、冠先輩の項目に不備が!?もっと、褒め称えるような文章構成にするべきだったのかな!?」 「・・・要」 「梳は、現実世界とペーパーの世界では性格が変わるんだよ。もしかしたら、ペーパーの世界の性格が地なのかもしれないな」 冠の後輩である幾凪梳は、レベル1の『筋肉透視』という能力を所有している。 皮膚一枚程度という非常に薄い程度の物しか透視できない能力で、それ単体では殆ど使い物にならないのだが、 幾凪は必死の努力の末に、相手の表情筋の動きから嘘を見抜く事が出来るようになった。その発展形が『表情透視』である。 このことを知っているのは花盛支部の面々と、冠と関係が深い椎倉だけである。 (椎倉自身は、以前の合同見分の折に冠から教えて貰った) 『実は、俺達風紀委員の中に嘘を付いている人間が居るかもしれないんだ』 椎倉は、下駄箱にて冠と幾凪にこう告げた。当初2人は戸惑ったものの、すぐ後に風紀委員の健康状態を調査するという名目を聞かされて納得したのだ。 「はぁ・・・。まぁ、いい。ありがとう、幾凪。もう帰っていいぞ」 「わかりました!それじゃあ、冠先輩・・・一緒に帰り・・・」 「すまないが、私は撚鴃と話がある。先に帰ってくれ」 「えぇ!?そ、そんな・・・。折角冠先輩と一緒に喫茶店とかでお話しようと思ってたのに・・・」 等と愚痴る幾凪を冠が宥め、結果帰宅させることに成功した。部屋に残るのは、椎倉と冠の2人だけ。 「撚鴃・・・。謝らなくていいぞ?お前が自分の信念を曲げてまで、私と梳に対して『真意解釈』を使用したのには相当な理由があるのだろう? 健康チェックとは比べ物にならない程重要な理由が・・・」 「要・・・。やっぱり気付いていたか」 「元カレの癖とかは梳が調べなくてもわかっている。それに、健康チェックだけが目的なら私は不必要だろ?梳1人を残せばよかった筈だ。 なのに、私も残した・・・つまり、お前は私に許して貰いたかったんだろ?私が可愛がる後輩に『真意解釈』を使うことを。違うか?」 「・・・そう、かもしれん。お前ならわかってくれると・・・心の何処かで思っていたのかもしれないな」 壁に寄り掛かり、目を閉じる椎倉。その隣に冠が寄り添う。 「・・・スパイが居るのか?私達風紀委員の中に」 「・・・それを確かめるための『真意解釈』であり、このレポートだ。本当なら、こんなことはしたくなかった。俺だって、自分の信念を貫き通したかった。 だが・・・そういうわけにもいかなくなった。おそらく・・・俺達風紀委員会に参加している者の中に『ブラックウィザード』の手先が居る。 大勢の命を預かる者として、何時までも自分の信念にばかり拘っていてはいられない。お前達に会い、改めて考え、そう判断した」 「・・・だから、それを調べる能力がある梳と私がスパイであるかないかを確認するために、信念を曲げてまで『真意解釈』を使用することを決断した。そうだな?」 「あぁ・・・」 椎倉の『真意解釈』は、相対する人間の心理状態を把握できる代わりに対象範囲が狭い。普通は1人だけ。把握できる範囲を狭めても精々2人までが限度であった。 対して、幾凪の『表情透視』は厳密に言えば超能力では無い。一種の特技だ。表情筋の動きにより、その時に抱いている人間の感情を大まかに知ることができる特技。 人間の表情筋はその人特有の癖はあるものの、歓喜・悲嘆・憤怒等の折に動かす顔の筋肉というのは決まっているものである。 例え、顔に出さないように表情筋を抑制したとしても、普通は反応の欠片くらいは露になってしまうものである。 そして、それを幾凪は見逃さない。一度対象における表情筋の動きや癖を覚えた後は、じっくり見る必要は無い。ポイントは把握済みだ。 故に、彼女は条件付ながら大人数に対しても『表情透視』を敢行することが可能なのだ。そんな彼女が欲する表情筋の動きや癖は、椎倉が用意した。 『「『ブラックウィザード』の捜査に関わっている風紀委員は今後、『シンボル』の行動を原則黙認する」、「時には『シンボル』の要請に協力する」、 そして・・・「『シンボル』のメンバーが、風紀委員やそれ以外の人間へ最悪命に関わるような危害を与えた、 もしくは何らかの原因で与えさせてしまったとしても、風紀委員は“数回”黙認する」。 以上“3条件”を、先程界刺と約束して来た』 『・・・あの男は、風紀委員や警備員の上層部が「軍隊蟻」と関わっていることを知っています』 『ちなみに、その中心人物の1人であった春咲桜は現在「シンボル」の一員です』 『現在進行中で、「ブラックウィザード」と単独で殺し合いを行っている・・・殺人鬼が居る。その男は・・・俺達を凌駕する力を持っている可能性がある!!』 『界刺に恋する少女達の逆鱗に触れたからだ』 『だから、当分の間は固地を[対『ブラックウィザード』風紀委員会]から外すことに決めた!!』 『だから、聞こう。この中で、現在何らかの理由で体調を崩している者もしくはその傾向がある者はいないか!? 嘘を報告した所で無駄だ。何故なら・・・俺の「真意解釈」でお前達の心理状態は全て暴かれている!!』 『もしこの場に居るのが俺では無く、界刺なら!この場に居る風紀委員の何人かが「シンボル」のメンバーなら!!この事件は、もうとっくに解決していただろう!!!』 他にも色々あるが、総じて言えるのはあの場に居る者の喜怒哀楽に係る表情を引き出すために、必要以上に強調したor衝撃的事実である言葉を放ち続けたということだ。 それを、秘かに幾凪が観察していた。彼女の挙動を悟らせないように、わざわざ『真意解釈』を用いたという嘘も付いた。 自分の『真意解釈』は、内通者にも知られている。それに対する対策をしていてもおかしくは無い。 唯でさえ、『真意解釈』は面と向かっていなければ効果を満足に発揮できない。下手をすれば、こちらの意図が読まれる可能性だってある。 今はまだ、『内通者の存在に気付いているのは固地債鬼唯1人』ということにしておかなければならない。 気付いていないフリをしながら泳がしておかなければいけないというのも、非常にネックである。故に、それを考慮した罠を仕掛けた。 健康チェックを盾にした数多の衝撃的発言には、さしもの内通者も動揺を隠せない筈。それは、他の風紀委員以上に激しい筈。 体調悪化がバレるのと、スパイ活動がバレるのとでは動揺の差は歴然である。 「いや・・・いいよ。撚鴃自身が一番辛いんだろ?むしろ、自分の信念を曲げなければならない苦しみを共に抱くことができなかった私こそ・・・済まない」 「要・・・」 「私は、お前が『真意解釈』を使うとわかった瞬間すごく心が痛んだ。きっと、撚鴃はすごく苦しんだ筈だってことがわかったから。 なぁ・・・。私は、お前と別れてからお前以上の男に会ったことは無いぞ?だから、お前のことなら私が一番よく知っている。 お前のことを誰よりも思っている。そう、自負している。だから・・・悔しいよ。肝心な時にお前の苦しみを共に背負えないのは・・・」 冠の頭が椎倉の肩に乗る。椎倉からは冠の表情は見えない。見えないが、今この時に冠が抱いている気持ち等、『真意解釈』を用いずとも椎倉には手に取るようにわかった。 「要・・・。ありがとう。本当に、ありがとう」 「撚鴃・・・。前に言ったが、もう一度付き合わないか?」 「・・・・・・コーヒーがなぁ・・・」 「・・・我慢する」 「なっ!?」 椎倉は驚愕する。冠の口から、『(コーヒーを)我慢する』という言葉を聞ける日が来るとは思わなかった。 「・・・その、なんだ。お、お前がコーヒー嫌いだったということは知っている。 そ、それなのに、お前に嫌な物を押し付けてしまったのを・・・それが別れる原因になっていたのを・・・これでも私は反省しているんだ。 で、できるだけ・・・が、我慢する・・・。時には我慢できないこともあるかもだが・・・その・・・あの・・・」 「・・・フッ。フフッ・・・」 「な、何がおかしいんだ、撚鴃!?」 椎倉の口から零れた笑い声に、冠は顔を赤くしながら憤慨する。 「要の口から、そんな言葉を聞ける日が来るとは思わなかった。フフッ・・・」 「な、何か失礼なことを言っていないか?」 「でも・・・嬉しいよ、要。お前が、そこまで俺のことを考えてくれているなんて思ってなかったから」 「・・・鈍感な奴め」 「そうだな・・・。今関わっている事件が解決したら・・・その時は考えてやってもいい」 「・・・すごい嫌なフラグを感じるのだが」 「大丈夫さ。そんなフラグ、お前なら全て溶かし切ってしまうだろ?」 「・・・ククッ、それもそうだ。なら、話は簡単だ。さっさと、この事件を解決すればいい。お前の指示と私の力で」 「あぁ。そうだな。・・・そうだとも!!」 そう言った後に、冠に緊急会議で出さなかった『ブラックウィザード』に関する情報を伝え、別れた。 椎倉は『表情透視』を読み込んで行く内に、記載されているある項目に目を付ける。そして、彼はすぐさま部屋を飛び出したのであった。 continue…?
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ーーーーー学園都市には人々の知らぬ「闇」が存在する。 それはまるで、底の無い沼のように。 それはまるで、光の入らぬ闇夜のように。 一度足を踏み入れれば二度と戻れない。這い上がることの出来ない無間地獄。 この物語は、そんな学園都市の「暗部」を生きる、修復者(デバッカー)達の物語であるーーーーー ~~side H~~ XX年一月一日:置き去り用収容施設「ガーデン」にて 時刻は午後11時。摂氏0度。身を刺すような寒さの中意識が浮上してきた。 「・・・・ん!・・・・・さん!」 誰かの声が聞こえる。さて、微睡みの世界を泳ぐのはそろそろ終わりだ。・・意識が覚醒する。 「・・・さん!人臣さん!聞いてますか!」 ・・・?・・・ああ。どうやら少し眠っていたらしい。 そういえば覚醒薬を服用してから既に3日経つ。 そろそろ服用し直さなければならないだろう。 人臣「聞いてるよ。それで?何の話だっけ?」 聞いてないけど。 研究員「聞いてないじゃないですか・・・。今回確保できた「置き去り」は15人です。」 15人。他の研究者との競合を考えれば上出来だろう。 それだけの数があるならば、しばらくは研究にも遊びにも困らないハズだ。 人臣「ご苦労さま。それじゃ、ボク達は一足先に研究所に戻るよ。 「置き去り」達は、トラックが来たら勝手に運んでくれるから」 そういってボクは車に乗り込む。・・・と、隣の人間が何か言いたそうだ。 人臣「何か問題でも?」 研究員「いえ・・・。何も人臣さん自ら運転することは無いんじゃ・・・。 眠たそうにされていましたし、私に任せて下さっても構いませんが。」 ・・・この人間は何も分かっていない。他人の運転する車に乗ることなど ボクにとって何の価値もない。 人臣「それには及ばないよ。運転は数少ないボクの趣味なんだ。 キミはそれを奪うつもりかい?」 そう、車はいい。ボクの聞きたいことだけに答えてくれるし、 何よりも余計なことは言わないし。愚かな人間よりもよっぽど優秀だ。 研究員「いや、そういう訳ではないですが・・・。人臣さん見た目が子供だから、 運転してるの見てると不安d(ビシィ! って、痛いじゃないですか!?」 人臣「人を見た目で判断するのは感心しないねぇ。ボクはこれでも立派な大人なんだが」 自分で言うのは癪だが、ボクの見た目は10歳前後の幼子と見紛う程に幼い。 ・・・これでも成人はしているのだが。 まあ、こんな人間の戯言に付き合ってる暇もない。 ボクはアクセルに足を掛けると研究所へと車を飛ばした。 チラリと目を横にやると「置き去り」のリストが目に入った。 彼らのこれからを考える。彼らはこれからボクの実験の被験者となる。 被験者、といえば聞こえはいいが要するに実験用のマウスのような物だ。 どう考えたって無事では済むまい。心から壊れていく者もいるだろう。 ・・・・堪らない。これだから研究者はやめられない。 人は壊れていく様は、何にも勝る芸術だ。どんな人間であろうと散り際は美しく、 そして人は散りゆく過程こそが美しい。 研究の結果など二の次だ。この美しさに比べればレベル6すら些細なことでしか無い。 人臣「・・・これから、楽しくなるなぁ・・・。フフフ・・・。」 研究員「何か言いました?って、人臣さんって笑うと意外とカワイイd(ズビシィ!!」 人臣「無駄口を叩いてる暇があるなら、今回の被験者から具合の良さそうなのを見繕っていてくれ」 車は研究所へと近づく。ボクの運命を変える出来事が待っているとも知らず。 ーーーーーこの後、ボクは一人の少女と出逢う事となる。 そう、後にも先にも二度と出逢う事の無いであろう逸材と。 彼女との出逢いがボクを含む学園都市の暗部を変える事になるのをボクはまだ知らないーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーとある科学の問題修復(チャイルドデバック)ーーーーーーーーーーー ~~side H~~ XX年一月十五日:人臣上利の所属する研究所「名前まだ決めてねぇ」 人臣「・・・ぅん。」 ・・・どうやらまた眠っていたらしい。覚醒薬に耐性がついてしまったのかもしれない。 暇を見て、配合を変えてみる必要がありそうだ。でないと不測の事態が起きる可能性がある。 ・・・因みに、覚醒薬というのは 「脳を活性化し睡眠を取らずとも100%の機能を発揮できる」という代物だ。 研究員「失礼します。人臣さん、ご報告が・・・。仮眠中でしたか?あれでしたら出直しますが。」 人臣「それには及ばないよ。・・・それで、報告ってのは?イレギュラーでも起きたかい」 イレギュラーがあったというのなら逆にありがたい。 最近は実験の進展も見られなくなって来たところだ。何かしらの変化が欲しいところだし。 研究員「いえ、それが。実験の下準備のためにこの前連れてきた被験者達に能力開発を行っていたのですが・・・」 被験者の一人が能力を発現したような素振りを見せました。」 へぇ・・・。この短期間で能力を発現するとは。中々素質がありそうな人間だ。 素質のある人間はそれだけ成果を出しやすい。 同時にそういう人間は壊れてく様もまた様になる。 人臣「把握したよ。今後はその被験者の動向に注意していてくれ。そのうちボクも様子を見に行く」 研究員「了解しました。それでは、失礼します」 研究員の置いていった資料を手に取る。 歳は・・・6歳か。被験者の中では年齢が高い方だ。最も、そう珍しい訳でもないが。 『目で追っていた虫が何の前触れもなく落下した』 『ガラスの壁の向こうのペンがいつの間にか移動していた』 『一瞬だが、瞳が光ったように見えた』 前の二つを見る限り念動力系か・・・?しかし三つ目は何だ?視覚がトリガーとなる能力か? ・・・ここで考えても今は答えが出そうにない。次の報告を待つとしよう。 そう思い目を閉じる。案外早く眠りはやってきた。・・・少し疲れていたのかもしれない。 XX年二月十五日 人臣「これは・・・。」 一ヶ月後。再びボクの所へ報告が上がってきた。 『同室にいた被験者が何の前触れもなく吹き飛ばされるという事案が発生。 原因は室内で発生した原因不明の強風によるものであり、 また、彼女のみ被害に遭っていないことから彼女の能力が発現した結果と思われる。』 人臣「空気使いか・・・。 いや、しかし発現からまだ間もないのに人を吹き飛ばすような強風を起こしたのか? だとすれば、条件次第ではレベル5にもなれる器かもしれないな・・・」 ・・・これは、一度実物を見ておく必要がありそうだ。 そこまでの能力者であるならば、安易に他の被験者と同じプログラムを課すのは愚策だ。 高位能力者が対象ならば、今までと違う結果が出るかもしれない。なにより・・・。 きっとこの「おもちゃ」ならボクを満足させてくれるに違いない。 そんな期待がどこかにあった。・・・根拠もなく。 XX年二月十六日:被験者収容室 研究員「おや。人臣さんが出てくるなんて珍しい。・・・例の被験者についてですか?」 人臣「ああ。少々気になることがあってね。一度実物を見ておこうかと」 そういって収容室の中を見る。 例の事態が起きた後で、再発を防ぐため個室が与えられたらしい。 肝心の被験者は・・・。どうやら奥の方で俯いているらしくここからでは顔が見えない。 人臣「中に入っても構わないかい?」 研究員「え!?危ないですよ!さっきあんな事があったばかりなのに」 人臣「問題ないよ。危険があるならさっさと引き上げるさ」 そういってドアを開錠する。部屋の中に入っても特に変わった様子はない。 奥にいる被験者の元へと近づく。・・・動く気配が無いようだが、これはまさか・・・。 ???「・・・スゥ。・・・スゥ。・・・ぅん」 寝ている・・・。この状況で昼寝が出来るとは、なかなか図太い神経の持ち主のようだ。 何にせよ、ここまで来たからには顔位は見ておきたい。 人臣「君、起きなさい」ユサユサ 肩を揺する。揺すりながら思う。 この状況は他人から見ればかなりシュールではないのだろうか。 自分は既に成人しているが、見た目の年齢はこの被験者とそこまで変わらない。 十歳に満たない幼子が二人並んだこの状況で、 片方が「君、起きなさい」と肩を揺すっている。 ・・・まるで何かのごっこ遊びのようだ。 そんな事を考えている内に目の前の被験者が目を覚ます。 ???「・・・ぅ。あなた、だあれ?」ムクリ 顔を上げる。その顔を見て、まず思ったことは・・・ 人臣「猫・・・」 そう、猫である。何もそのままの意味ではなく その顔立ちや髪型が猫を連想させる、というだけの話だが。 大きな瞳に整った顔立ち、そんな顔面から視線を上げれば猫の耳と見紛うような癖の付いた黒髪。 ・・・そんな事はどうでもいい。被験者など所詮ボクのおもちゃに過ぎない。 彼女もこれからボクのおもちゃになると思うと楽しみで仕方ない。 人臣「ボクは人臣上利。この施設の責任者だ・・・と言っても伝わらないか。」 ???「・・・?ひと、おみ。それがあなたの名前?」 人臣「そうだ。 ・・・要するにキミは、これからボクの言うことを聞かなくてはならない。分かるかい?」 この研究を続けてきて思うことは子供の扱い難さだ。 無知な子供たちはボクの言うことを理解できず、 かといって間違った事を言えばそれもしっかりと覚えてしまう。 不必要なものが多すぎるのだ。 ???「そっかぁ・・・。あなたも私に痛いことするの?」 人臣「・・・ああ。痛いことも苦しいこともするつもりだ。キミ達にとってボクは絶対なんだ。 キミ達はボクのおもちゃなんだから。」 ???「いやだ、っていってもやめてくれないの? ・・・くれないんだね。ひとおみっていじわるなんだね。」 意地悪とは、また妙な言い方をするものだ。 自分の命を奪うかもしれない相手に対する言葉にしては随分軽い。 まぁ、6歳の幼子にこんな事を言っても仕方ないが。 ???「わたしの名前もいわないとね。・・・しほ。しほう しほ(四方 視歩)だよ。」 「四方 視歩」か。・・・いや、なかなか大していい名である。 というか、書類にも書いてあっただろうにそれを確認してなかったのか。 そこまで集中力に欠けていたのだろうか。そろそろ少し休暇を取るべきか。 そんな事を考えていて、ふと気づく。なぜこの子はこちらに向けて掌を向けているのか。 嫌な予感と共に彼女の口が開く。 四方「わたしね、すごいことに気が付いたの。こうやって手を向けて・・・。 『飛べ』って思うとホントに飛んでいくんだよ。」 人臣「ッ!?」 迂闊だった。能力が発現したのならこう言う可能性も考えるべきだったのだが・・・。 だがこんなことは初めてである。 置き去りの子供たちが明確にボクに敵意を向ける事はこの時点では多くない。 幼さゆえに自分がされている事が理解でき無い。 ボクという現況に危害を加える、という発想に至らないのだ。 その時起きた事は至って簡単である。 彼女の能力で生み出されたのであろう強風でボクが吹き飛ばされただけのことである。 ・・・だが、その威力は単純では済まなかった。 吹き飛ばされたボクは壁に打ち付けられ、尋常ではない衝撃を受けた。 四方「あれ?ひとおみ、どうしたの?・・え、ひと・み。ねぇ・・・ば!」 まずい、意識が遠のいてきた。 不覚をとった自分への憤りと共に自分がどこか歓喜を覚えていることに気がつく。 こんな子は初めてだ。恐らく彼女にはボクに対する敵意は無い。 にも関わらずボクに対して能力を躊躇なく使ってきた。 それが異常な事だとは微塵も思わず、さも当然のように。 ・・・きっと彼女もボクと同じ「異常者」なのだろう。 その事実が何よりもボクを歓喜させたのだ。 「異常者」が「異常者」を壊す。これ以上なく滑稽且つ、愉快ではないか。 ボクの全力をもってこの子を壊してみせる。 そうすれば、ボクは今までにない何かを掴めそうな気がする。 怒りと喜びが混ざり合った複雑な感情を抱きながら、 さながらTVの電源が切れるようにボクの意識が消失した。 ーーーーーこの出会いは、それこそ「運命の出会い」だったのだろう。 この話は、ここから紡がれる彼女たちの物語の序章の始まりに過ぎない。 この英雄譚というにはあまりに不格好で稚拙なこの物語の序章は、 不肖このボクを語り部として進んでいく。ーーーーー
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とあるファミレスのバカップル とあるファミレス テーブルの上のグラスにはまだ半分ほど中身が残っている。が、上条も美琴も、もう一度ストローに口をつける勇気はない。 演技マジック、もしくは非日常マジックと言おうか、役柄を演じることによって普段の上条と美琴なら絶対にしない事をしてしまった。 我に返るとかなり恥ずかしく、穴があったら入りたい気分。 そして上条としては困ったことに、 (話題が無い……共通の話題となると、御坂妹とか第3次世界大戦、グレムリンの時とかの話し。こんなところできるかっ!つーか恋人同士の話題じゃねーだろ、困った) 対して美琴は (もうヤケよ、ヤケ。どーんと来い、つーの……あっ、黒子放ったままだった。黒子もひょっとしてナントカアイテムを使って、ああなった?) ヤケッパチな自己逃避、関係無くもないがこの場には関係ないことを考えていた。 (どーすんだよ?) 困って美琴を見る上条に (ふっ、早くなんか言いなさいよ) 自己逃避から開き直ってドーンと来いと構え上条を見る美琴。 内情を知らない店内の人々は見つめ合う二人、目で語り合える二人として見ている。 「すいません、このコーヒーもっと苦くなりませんか」 「そうですね、厨房で煮詰めて来ましょうか、少しお時間宜しいですか」 「できるだけ早くお願いします、砂糖を吐いて死にそうなんです」 「急須にお茶葉を目一杯詰め込んで淹れたお茶を頂けませんか、言い値で払いますんで」 「申し訳ありません、代金は要りません。サービスさせて頂きます」 「メニューに壁ありませんか?壁殴り代行に頼もうにも予約がいっぱいで追いつかないそうなんです」 「さすがに壁はメニューにございません、代わりに手打ちうどんの実演を急遽ご用意致しました、お試しになられては如何ですか」 「超甘いです」 店内のそこかしこでそんな会話がされていた。 漸く、上条が言葉を口に乗せる。 「美琴」 (また名前だけかよっ!) 「ナニ、当麻?」 (そういう私もナニってつけただけ……) 「これから、どーする?」 (……もっと気の利いたこと言えっ、つーのよ) 「当麻はどうしたいの?」 (ふん) (御坂に決めて貰おーと思ったのに!) 「どーすっかな、このまま美琴と一緒に居られるだけで幸せなんだ、俺は」 (くっ、そう来ますか……演技とわかってても、そんな事言われたら、まだドキッと来るわ) 「それじゃあさ……」 (うーん、でもこのまま間が持たないのもね、一旦外に出てぶらつくのも、いいかな?) 上手く話題が見つからなくても、腕を組んで歩けばそれらしく見える、と。 美琴は想像する。 腕を組み歩く二人。恥ずかしげに上条を見上げる美琴。その美琴に微笑みかける上条。そして優しく言葉を…… 頬が上気しそうになり、心臓の鼓動が早鐘を鳴らそうとする。 飽くまでも演技、演技だからこそ言葉を紡いで行けばその幻想は実現する、仮初めであっても手には入る。しかし、その言葉が中々出てきてくれない。 そんな美琴とは裏腹に、 (あっ、そーいや今日インデックス居ないんだったな、また小萌先生に呼ばれて……小萌先生の配慮だよな、奨学金が出た日ぐらい栄養あるもの食べなさいって……だが、ここは!) 「美琴、どーせだから此処で食べていかないか?」 「美琴も夕食まだなんだろ?俺が払うからさ」 (ア、アンタね!……って俺が払う?) 「ダメよ、私が払う」 (あーーーっ!私のバカっ、バカっ!つ、つい。それより、って提案すれば良かったのに……儚いのね幻想って) 「それこそ、ダメだ」 (心配すんな、今日の俺はファミレスの食事ぐらい、ふっインデックスの食費に較べたら屁でもねー!それより御坂に迷惑かけてんだ、これぐらいさせて下さい) 「私の方が(お金持ってるなんて言っちゃダメよね)余裕あるもの」 「カッコ良い俺で居させてくれよ」 素で微笑みかける上条。 (私の前に現れるアンタはいつもカッコ良いんじゃーーーっ!) 「あっ、カッコつけさせてくれよ、だったな(気障っぽくなっちまった)でもな美琴、払わせてくれないと上条さんが情けなさすぎます」 優しく語りかける上条。 想像したばかりの上条の姿に、 (あわわわわわわわわわわわわ) ぷしゅー、と湯気が噴きそうな美琴。 この幻想は消えてくれない。演技でなく上条は心より言ってくれいる。 「ダメ、か?」 「ダメじゃない」 店内では 「激辛麻婆豆腐お願いします」 「ゴーヤチャンプルー、ゴーヤ増量で」 「刺身定食、ワサビ山盛りで」 「超激辛カレーで」 やはり夕食時間なのか、そんなオーダーが入る声が聞こえてくる。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とあるファミレスのバカップル